○弓とオツの交差点。

コスチューム・アーティスト・ひびのこづえさんのブログから。
http://kodue1958.exblog.jp/21213912/
カワイイだけでない珍妙なブローチ、イイ。

こっちは彼女が渋谷でやったワークショップで生徒の子どもが作ったやつかな?
カブトムシ的なやつ!これも滅茶苦茶よい!
http://kodue1958.exblog.jp/21213767/


ふと思い出したのはBSの番組。柳家花と岡田斗司夫が喋っていた。江戸の粋とかオツとか美意識のはなし。岡田斗司夫が言うには、
オツは本来甲乙丙の「乙」で、2番の意味。それが「風変わり」とか「珍妙な」って意味になったのは、天下人、太閤秀吉のせいとか。
要するに、一等の甲は、天下人の秀吉様の献上されるモノなので、下々の者にとっては乙が一等となり、珍妙な奇天烈を愛でる美的センスに発展したってコト。オツ、俺的にいうと頓知だよね。ただただ珍妙を追求するのは煮詰まってちゃうだけだし。煮詰まりと破壊の二つの戦いが珍妙だったらイイのかも。

そんなこと考えていたら、昨日テレビでやってたドキュイメンタリーの弓道八段の人の言葉とつながった。
「我々は空間を表現している。的にあてるなんて二の次」。

観たのは、NHKの「アスリートの魂」って番組の「終わりなき探究 弓道 増渕敦人」の回。
増渕さんの弓道は終なき探求というか、泥沼にはまり込んだ印象がある。彼はかつて29歳という若さで天皇杯優勝した弓道界のホープだった。が翌年は全部的を中てながら惨敗した。
何故か?

「たんなる的あて」と審判団からその弓道姿勢をを否定されとか。
的中率98.8パーセントの的中率。当時「的中の怪物」と云われた弓道界の若きプリンスは、絶頂期のど真ん中で「オマエの弓道はスポーツ臭い!」とダメ出しを食らったのだ。

以来増渕さんは弓道は混迷期に入る。完全に自信喪失状態。20年間!!県大会では優勝するだけど、天皇杯という舞台だと重圧がスゴいのか、全然ダメだめだったみたい。今年51歳の増渕さん、一念発起し天皇杯を見据えあれこれやる。iPadでフォームチェックし若手の意見を聴いたり、筋トレしたり、地域の大会に出たり。色々試行錯誤。

で、最後の最後の岡崎範士の道場を訪れる。迷える弓道の子羊・増渕さんにとって、頼みの綱というあんばい。 そして岡崎範士の件の言葉。
「我々は空間を表現している。的にあてるなんて二の次」。

空間を表現している!と言い切る範士の言葉は強かった。困惑顔の増渕さんともどかし気に声振り絞る岡崎範士が印象的だった。

写真が発明されて、絵描きはリアルを追求すことに意味がなくなった。弓も銃器の発明で、武器としての存在意義は希薄になった。それが弓道のはじまりだったかも。だとすれば、真顔で的中目指してもしょうがないよね。フザケロってことじゃないよ、煮詰まりと破壊がなくてはならんってこと。

結局、今回も増渕さんは天皇杯で優勝できなかった。というか決勝にさえ進めなかった。けど最後の開き直ったせいか、矢は的中した。あれが次の増渕さんにつながるとイイと思う。といっても、増渕さんの「次」って天皇杯とかじゃないかも。

増渕さんは30歳のとき、自分に弓道を否定されたことがトラウマになっている。雪辱したいって気持ちは重々分かる。けど、もう51歳だぜ。あと人生折り返し過ぎてる。人の評価とかそんなこと、もーイイんじゃないかな?

まぁおれは増渕さんじゃないから簡単に言えるんだろうけど。でもそんなふうに考えてみるのも一興っていうかさ、オツじゃない?