○言ってることは真っ当。言い方が不穏! − 押井守著「監督稼業めった斬り―勝つために戦え! 」(徳間文庫カレッジ)感想。


◇映画論でも監督論でもなく、監督稼業論というスタンス。
儲けを出してナンボは前提であっても、それだけでは監督稼業はままなン、というスタンス。押井さんが言いたいこと案外まとも。けど、言い方は物騒。
曰く、宮崎駿は「帰って来れない不幸な人」。
曰く、高畑勲は「地位はあるけど戦争できない将軍」。
曰く、スピルバーグは、「場外ホームランを打たない、ボコボコヒット打つ代表作なしの人」。
という感じの「めった斬り」感。

宮崎駿についての言及は多めで、彼はアニメーション王侯貴族。「崖の上のぽにょ」は、才能ない奴は国へ帰れ!的アニメのマスプロ化への宮崎さん流の巻き返しと解釈。対して、自身は才能ありきで出発していない。でも先輩たちのいいところは拝借できる形に咀嚼してきたと自負を語り、宮崎さんとは対極で、才能のない奴も国帰る必要ないぞ!的アニメのマスプロ化擁護派だと自分の立ち位置を語る。

私のまとめだけ読むとアレだけど、実際宮崎さんをクソミソ言っているわけじゃない。その才能に驚嘆しているが、自分は同じことできないし、かりに出来たとしても宮崎亜流のレッテル貼られるのを警戒し、宮崎化しない道を探してきたというニュアンスか。宮さんは道をつくらんけど、俺はつくるぞっという決意というか、それは後進のためいうより自分の活路と見定めたというハナシ。

シビレるほど頭が低いというか、頭を低くして勝とう!という野心の眈々さにぞくぞくする。よくわからんけどカッコイイ!演出が淡泊というスタイル。押井さん、今はそれが自分のスタイルとなってるみたいだけど、この本読んでその淡泊さも戦術的に選んだものだったかもと思ったりも。

そういえば、三池崇のことを「作家的資質がたっぷりありながら、自己規定が職人な人」と言っている。なるほど三池さんの芸風そう考えるとすごく合点がういく。思わず膝を叩きかけ。。。ん、でも、これって押井さんの本人のことじゃないかな。いや、やっぱ違う。押井さんは、「作家的資質はたっぷりあるけど、戦略的に職人を装ってきた人」ってことか。。。な。

この本、押井さんの作風をまんまなぞっているフシがある。主張は単純明解。けど主張のプレゼンが外連味てんこ盛りという。。。。
というわけで、監督稼業めった斬り―勝つために戦え! 」、猛者猛者の先輩たち。連中がぞびゅーんと立ちはだかるなか、己の監督稼業をどう軌道に乗せるかそれを必死に考え、それなりに生き残ってきた男の腹話術的肉声だと思った。面白い。


監督稼業めった斬り―勝つために戦え! (徳間文庫カレッジ)
監督稼業めった斬り―勝つために戦え! (徳間文庫カレッジ)押井 守

徳間書店 2015-04-02
売り上げランキング : 68167


Amazonで詳しく見る
by G-Tools