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○言ってることは真っ当。言い方が不穏! − 押井守著「監督稼業めった斬り―勝つために戦え! 」(徳間文庫カレッジ)感想。

◇映画論でも監督論でもなく、監督稼業論というスタンス。 儲けを出してナンボは前提であっても、それだけでは監督稼業はままなン、というスタンス。押井さんが言いたいこと案外まとも。けど、言い方は物騒。 曰く、宮崎駿は「帰って来れない不幸な人」。 曰…

◎2015年の収穫。 1.アゴタ・クリストフ三部作。「悪童日記」、「ふたりの証拠」、「第三の嘘」(ハヤカワ文庫)。 アゴタは下手クソだけど、それが味になっている。いや味っていうか、凄味だな。 長めの感想はこちら。 2.マイケル バー=ゾウハー、ニシム ミ…

◎みずほの勇姿に感涙!ー マイケル・ルイス 著「世紀の空売り 世界経済の破綻に賭けた男たち」感想。 ◇リーマンショック。俺は全然蚊帳の外だったからあれだけど、モロかぶっちゃった方々は笑えない。資産つーのかな一瞬にして紙くずになるわけで、いろいろ…

◎今どき珍しほどのガチのスパイ組織から見た近代史 − マイケル バー=ゾウハー、ニシム ミシャル 著「モサドファイル」感想。 ◇ポール・バーホーベン監督の「ブラックブック」を思い出した。運命の歯車が狂い、オランダのレジスタンスに味方するユダヤ人女性…

◎「悪童日記」、「ふたりの証拠」、「第三の嘘」。アゴタ三部作感想。 ◇「悪童日記」。双子の男の子のはなし。彼らが祖母にあずけられ、忍者ばりの自主訓練のすえ強靭な精神力と生きる知恵を手にする過程を描いたもの。タイトルの「悪童日記」はふたりが帳面…

○天道信仰と女の子たちのミューズ − 神田千里「島原の乱」(中公新書)感想。 ◇櫻井有吉アブナイ夜会だったか、加藤ミリヤが「誰かのミューズでありたい」という意味のことを喋っていた。 カメラも回すディレクターに「ミューズって何ですか?」と問われ、「…

○ル・カレ的スパイ小説と腐女子大好物の奇跡的融合 -五條瑛 著「プラチナビーズ」感想。 (ISBN-13: 978-4087473445) ◇見た目以上にひょろっちい男の巻き込まれ系サスペンス!で、なおかつ「あぶない刑事」とか「相棒」的なコンビもの。在日米軍の「会社」と…

○トンビも工夫次第でタカになる! − 東尾修著「ケンカ投法」感想。 ◇絶妙なコントロール、シュートとスライダー、曲がらないカーブ、緩いの二つ投げて3度目はクイックの牽制でランナーを殺す等など。現役時代の投球術、工夫エピソード満載。とにかく転んで…

○走りつづける。作家・村上春樹にとってそれが大事なことだと知った。− 村上春樹著「走ることについて語るときに僕の語ること」感想。 ◇今年6月から週4日ペースで走っている。当初は3キロ。走る姿勢もおぼつかなかったから、犬の散歩にも追い抜かれた。今…

○年の瀬、恒例の今年の収穫報告の季節。暫定一位はコレ!− 小川剛生著「足利義満 公武に君臨した室町将軍」(中公新書) ◇都はひどく困憊し、帝の台所も火の車。宮中行事も滞る始末。 南北朝の抗争がその発端だった。 二条良基は日記を書いていた。事実でな…

○樋口毅宏著「タモリ論」感想 その2 ◇むかし作家の村松友視がプロレスラー語りやっていた。さらに昔寺山修司が競馬叙情派を打ち上げていた。対象を率直に語るでなく思い入れフィルター越しに語り倒すという芸風。この本は、それのタモリ語りヴァージョン。…

○樋口毅宏著「タモリ論」感想。 ◇きほん個人的なタモリ観の披露なんだけど、全然いやでない。脱線しまくりの本。なのにドンドン引込まれる。楽しいのに切ない。小躍りしたい気持なのに哀しい。とにかく単純にああ面白かった!じゃ片付けられない本。ド直球の…

○高島俊男著「お言葉ですが…〈別巻3〉漢字検定のアホらしさ」感想。 ◇「お言葉ですが…別巻3」に、白川静と白川静と藤堂明保の論争についての コラムがあると知り、収録の「両雄倶には立たず 白川静と藤堂明保の「論争」」を読んでみた。 高島さんによると、…

○宮内悠介作「盤上の夜」感想。 ◇「盤上の夜」は、六つの作品が収められた短編集。収録作はすべて囲碁、将棋、麻雀などの卓上ゲームにまつわるもの。 表題作は第一回創元SF短編賞(山田正紀賞)受賞。というけど、この短編を読んだ印象としてが、宇宙とか…

○権藤博著「教えない教え」感想。 (集英社新書) ◇本書は、権藤流のボス論。上に立つ者のあるべき態度を説いたもの。管理職に昇進したばかり、部下にどう接していいか迷い中の「新米上司」向けの内容。 監督と呼ばれるのが嫌いで選手やスタッフから「権藤さ…

○リア充義満は皇位簒奪を野望したか? 小川剛生著「足利義満 公武に君臨した室町将軍」感想。 ◇義満には皇位簒奪の嫌疑がある。本書はそれを否定する立場。というか、この本、義満の評伝。で、今日的な史料読み得られた最新の義満像から、皇位簒奪容疑は濡れ…

○2012年の収穫(順位なし)。 ◇小川剛生著「武士はなぜ歌を詠むか」(角川書店) 室町末期まで、和歌は人心掌握の術であり、外交のチャンネルでもあった。つまり武士は政治活動の一環して和歌を詠んだのだ。 本書は鎌倉から室町末期までを眺め、和歌そのもの…

○ 内なる投手 - 江夏豊著「エースの資格」感想。 (PHP新書) オレは子供のときのイメージを大切にしている。自分が子供のときってどんな人がカッコよかったのかなって考えているわけですよ。そのカッコよかった人を実践したい。今の大人になった自分で。 上に…

○本郷和人著「謎とき 平清盛」 (文春文庫) ◇本郷さんは日本中世史が専門の東大の先生。「石井進氏、五味文彦氏に師事」と本書略歴にあり、大体のスタンスも分かる。 で、本郷さん今回の松山 ケンイチ主演のNHK大河ドラマ「平清盛」の時代考証にあたってお…

元木泰雄著「河内源氏 - 頼朝を生んだ武士本流」感想。 (中公新書) ◇摂関家の神通力も衰え、院、天皇、摂関家。三つどもえ、あるいは寺院を巻き込んでの四つともえの政治がゲーム化一途をたどり、地方は云うにおよばず洛中の治安まで悪化を招いた平安後期、…

○為義、百年分の不運の巻/元木泰雄著「河内源氏 - 頼朝を生んだ武士本流」読み中。 (中公新書)剛直な政治家師通の急死。それは藤原摂関家においては前途多難の前触れで、白河院とっては吉兆だった。院はこの機会を逃さず、摂関家から政治の主導権を奪い、い…

○義朝の躍進の巻/元木泰雄著「河内源氏 - 頼朝を生んだ武士本流」読み中。 (中公新書) ◇義朝の生涯における最大のターニングポイントといえる出来事、それは仁平三年(1153)3月28日の下野守就任だったらしい。 義朝の破格の出世は、彼の骨折りに対する褒美…

○元木泰雄著「河内源氏 - 頼朝を生んだ武士本流」読み中。 (中公新書) ◇河内源氏の成立(第一章)、東国と奥州の兵乱(第二章)、八幡太郎の光と影(第三章)という按配で朝廷政治のなかでの河内源氏の立場、その盛衰を時系列に綴ったもの。 この三章までは…

○2011年の収穫。 1.菊地成孔・大谷能生「アフロ・ディズニー2」 (文藝春秋) 付箋貼りまくりで読んだ一冊。ボディーブローのようにグングン効いてくる本。なかでも松尾潔の回が印象的。 感想はこちら。 http://d.hatena.ne.jp/yasulog/20110514/p1ア…

○100均棚と想像力 ー 片岡義男著「木曜日を左に曲がる」雑感。 ◇小説を読む。それは「小説家」というフィルター越しに現実世界眺める行為かのかもしれない。小説家の職能、存在意義をそんなふうに漠然と思っていた。それが最近、絶対そうだと確信に変わっ…

○天秤、片方にサービス精神。 ◇久々に池袋へ。渡辺義浩「三国志」(中公新書)、奥泉光「桑潟幸一准教授のスタイリッシュな生活」を買う。平凡社ライブラリーの「史記列伝 二」はリブロになかったのでジュンクで買う。 赤坂英一「プロ野球 二軍監督」(講談…

○数字とプレゼン ー 小野俊哉「プロ野球解説者の嘘」感想。 ◇プロ野球シーズン真っ盛り。お茶の間でテレビ観戦してると、解説のプロ野球OB解説者は、往々に自身の経験則をべらべら捲し立てている。連中は野球は上手かったかもしれないが喋りはスブの素人だ。…

○樋口毅宏「さらば雑司ヶ谷」読了 ◇「さらば雑司ヶ谷」は、漱石の「坊ちゃん」がタランティーノや北野武の映画世界に紛れ込んだようなノワール小説。 雑司ヶ谷。地下鉄副都心線が開通し、一躍メジャーな東京散策スポットに躍り出た街。街で代名詞である鬼子…

○パッと見、分かりにくい怪物。 ◇石川雅規「頭で投げる。」(ベースボールマガジン新書)読み中。 石川はプロ野球選手。東京ヤクルトスワローズのエース。シンカー、カーブ、チャンジアップ、スライダーなど多彩な変化球を操る技巧派左腕。公称167センチ…

○様式のパッチワーク ー 山形孝夫「聖書の起源」(ちくま学芸文庫)雑感 ◇山形孝夫「聖書の起源」を読むきっかけは、映画「冬の小鳥」をみたことだった(以前書いた感想はこちら)。父親とジニの関係をイエスと父なる神のそれになぞらえて語る巧みさに圧倒さ…