○トンビも工夫次第でタカになる! − 東尾修著「ケンカ投法」感想。


◇絶妙なコントロール、シュートとスライダー、曲がらないカーブ、緩いの二つ投げて3度目はクイックの牽制でランナーを殺す等など。現役時代の投球術、工夫エピソード満載。とにかく転んでもタダじゃ起きないタイプ。逆境をバネに伸びる人。プロ向きと言えばそうかもしれないが東尾の場合、その負けん気しかなかった。

豪速球やガクンと落ちるフォークでもあれば、東尾の野球人生もまた違っていただろう。けど、ストレートも変化球も並。活路は必然コントロールだった。

球威が並以下な自分は外角が勝負が前提。でも外角ばかり投げては踏み込まれる。シュートなどを交えたキビシい内角攻めは外勝負のための布石。1986年、日ハムのデービスが肘にあたった死球に激怒し乱闘になった。阪急上田監督は、この乱闘事件に乗じ「東尾は故意にブツけている」と発言したらしい。むろん東尾の投球術を封じる上田流の悪知恵戦法だったろう。

東尾、投げるとき打者を左目で威嚇しながら投げた。踏み込まれないための内角攻め、そのさらなる保険。この左目睨みのせいで、現役を退いた今も左半分の歯に後遺症があるらしい。食いしばり過ぎた結果。

くだんの上田監督が故意にブツけている発言後阪急戦。売られたケンカは買う漢東尾、当然内角攻めを封印して外一辺倒で阪急打線に挑んだ。結果は東尾に軍配。阪急打線を簡単に踏み込ませない左目で睨む形相のスゴさが物語るエピソード。顔を想像すると面白い。

たぶん今でいうカットボール。東尾はそれを独自に編み出し、「曲がらないカープ」と名付けた。そう名付けたのは、彼が意図をもってボールを投げていた証拠。そして、圧巻の左目睨み。顔まで動員する投球術っての前代未聞だ。ケンカ投法とはケンカ腰というわけじゃない。球威が並でも攻める気持はキープという気構えだ。

東尾修。投手として一人前になりたいという執念が本当にそうさせた希有な存在。並な才能でも工夫次第で高みの上れると証明した好例だと思った。壁にぶちあっている投手の皆さん、読むべし!



ケンカ投法 (ベースボール・マガジン社新書)
ケンカ投法 (ベースボール・マガジン社新書)東尾 修

ベースボールマガジン社 2010-11
売り上げランキング : 345485


Amazonで詳しく見る
by G-Tools