○パッと見、分かりにくい怪物。


石川雅規「頭で投げる。」(ベースボールマガジン新書)読み中。
石川はプロ野球選手。東京ヤクルトスワローズのエース。シンカー、カーブ、チャンジアップ、スライダーなど多彩な変化球を操る技巧派左腕。公称167センチの上背で、野球マスコミ界隈で「小さな巨人」と称される異形の投手だ。
ベースボールマガジン社の本だけあって実践的な内容。「野球を始めたきっかけ」→「挫折→「克服」という感じの、総合出版社のプロ野球選手本の典型と一線を画している。
マウンド上での投手心理や配球に対する考え方、投球フォームなどなど、投手というポジションに対する石川の経験を押し付けてでなく後輩にアドバイスするトーンで書かれている。これは編集方針が中・高校の野球部の投手や彼らの指導する立場にある者を想定読者に据えたせいだろう。たしかに背丈も低く球も速くない投手の語る創意工夫や経験は、投球の幅を広げるという意味で色々参考になると思う。
けど、ボクは打者こそ読むべき本だと思う。先に書いたように、石川は結構赤裸裸に投手の内面、試合中の駆け引きの肝を語っている。つまり、ここにはピッチャー心理や投球の極意が詰まっている。
打者が来た球を打てばイイ牧歌的時代はとっくに終わっている。投手の心理を知り、配球の意味を熟考すべきだ。そのうえで配球に対応する打席プランが出来あがる。素振りや特打だけが打撃の練習ではない。相手の立場で思考せよ。マウンドから眺めた景色と打席に立つ自分を想像してみよう。あなたが野手として栄達を望むなら、その大願成就は石川視点のなかにあると思う。




頭で投げる。 (ベースボール・マガジン社新書)
頭で投げる。 (ベースボール・マガジン社新書)石川 雅規

ベースボールマガジン社 2011-05
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