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○無垢と書いて「ピュア」と読ませる。
ヘンリー・ダーガー展を観る。場所は原宿ラフォーレミュージアム。「キチガイってこういう素敵な絵を描くのよ」という展企画者の小出さんの鼻息がビュービュー吹きまくるの展だった。
ダーガー当人の電波系キャラにフォーカスし、彼の不遇な人生文脈で作品を展示する趣向に違和感。そもそもダーガーの絵は、彼の妄想的戦争物語の挿し絵としてあるはずだから絵だけ切り離して展示することに作為がある。その作為は、ひたすら自分の妄想イメージの再現を目指す「無垢な人」というダーガー像に収斂している。
こうした無垢や素朴を強要する上から目線は、民藝運動の親玉・柳宗悦を彷彿させる。
岡本太郎と柳宗悦。二人は東北や琉球など辺境日本に目をむけたことで共通する。が、二人が「発見」した対象はまるで違っていた。柳は「素朴」を、太郎は「なんだコレは!」を発見した。
なぜ、柳は「素朴」を発見したのか。なぜ縄文を見て見ぬふりしたのか。なぜナマハゲから目を反らしたのか。柳にしてみれば、民藝は職工の生活安定を意図した同業組合だった。つまり組合員の芸術家的野心やエゴは、結束の障害でしかなかったのではないか。
翻って、ヘンリー・ダーガー。彼の遺した戦争物語とその挿し絵は、本当に「素朴」なんだろうか。いわゆるアウトサイダーアートとは、小出さんの「民藝」なのではないか?
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