○居直りと邁進 ー 岡崎勝世「聖書vs世界史」読了
講談社現代新書 ISBN:9784061493216


とあるつけ麺屋のカウンター。あの日、ボクは声を聴いた。
つい先日、地元で人気上々のつけめん屋にワザワザ列に並んで食べてみた。全然旨く無かった。むちむちの太麺も、ウワサの魚介系つけ汁も、味玉も、チャーシューも、割り箸も、微塵も旨くない。むしろ積極的にマズかった。不味さのあまりアタマが混乱した。感情とはいうには儚い心のワサワサが渦巻いた。
「我々が住むこの世界は一体どのようなメカニズムで動いているのか?」そう、そのときボクはあの声を聴いた。野太い調子で、世界の根本的仕組みを問う声を!
岡崎勝世「聖書vs世界史」を読み終えた。本書は聖書的世界の起源から決別し、今日的世界史認識にいたるその歩みを解説したもの。つまるところ世界史とは、このあいだボクも聴いてしまったあの声の落胤といえるだろう。
世界史という認識は端的にいえば宗教的威厳の失墜に始まった。つまりあのルネサンスってやつは、宗教的抑圧に対するカウンターカルチャーだったわけだ。罪深い存在。ながらく欧州を支配してきたキリスト教的人間観がルネサンスを期に一転した。とるに足らない人間的営みや心の機微を全面的肯定された。
人間万歳!人間サイコー!神に対する居直りともとれる態度こそルネサンスの根幹なのだ。家畜を養い、田畑を耕し、祭りを祝い、諍いをいさめてそれなりにやってきた人間の営みを自画自賛的の全肯定!それがルネサンスという運動だったのだから。目線を下げ人間にフォーカスした。すると、無闇矢鱈に有り難っていた宗教的権威も実は人間の寄り合いであったと気づいてしまった。「だってにんげんなんだもの」。ある意味相田みつをは大層遅れて登場したルネサンス人だったかも。
宗教改革という運動はそうした人間万歳路線の先にあった。そしてニュートン。彼のような科学の徒の出現も既存の宗教権威の神通力後退がたったと思う。ニュートンは三位一体説に批判的だったらしい。
神が世界を創造した後、世界は独自の法則で運動するというのが理神論という立場らしい。筆者の岡崎はニュートンのそれも同じだったと考えているようだ。かくして、ニュートンは神の抽象度深化させ、この世界の仕組み、真理の探求に邁進したということだ。それが彼なりの信仰のカタチだった。


聖書VS.世界史 (講談社現代新書)
聖書VS.世界史 (講談社現代新書)岡崎 勝世

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