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○鼻息、ため息、青天の霹靂。ー 斎藤慎一「戦国時代の終焉「北条の夢」と秀吉の天下統一」感想
最近夜走っている。食事制限式ダイエットがあまり効果ないので、運動での体脂肪燃焼に踏み切ったのだ。
「走る」と言っても、飛脚のように飛ばすわけでない。ウチのまえの下り坂を、体の重みでトコトコと下り、その勢いそのまま３キロほど走っってしまうという寸法だ。
そんな転がるような走りっぷりで痩せるのかと疑問に思うかもしれんが、コレが効果テキメン、ばしっと体重計に評価されるのだ。効果があがるとなんで面白いもんで、週末だけの予定が基本毎日走ることなった。
ところがオッサンの身体というのはやけにデリケートで、走りのあと膝やクルブシが痛いと言うのだ。というわけで、身体の声を聴いた俺は銀座のABCマートに出向いた。ABCマートは靴量販店だが場所柄銀座店は接客が丁寧でお気に入りの靴屋だ。で、ナイキのシューズを買った。
帰りしな三省堂に寄った。三省堂２階で何かが呼んでいる気がしたのだ。呼んでいたのは「フェイスブック 若き天才の野望」だった。さいきんiPodで映画「ソーシャル・ネットワーク」サントラをぐるぐるヘビロテで聴いてるので、それでコツイに呼ばれたんだろう。これも縁だということでレジにむかった。
デヴィッド・フィンチャー監督「ソーシャル・ネットワール」は現代版太閤記だ。秀吉の伸し上がり人生は陽気に満ちているけど、この映画が描くフェイスブックの創始者マークの成功譚は陰気、というか灰色掛かっている。
鼻息とため息。
この映画「ソーシャル・ネットワーク」は雇う側と雇われる側に横たわる深い溝のハナシだとも言える。つまりマークは、ため息側からの脱出を試みたのだ。facebookとは彼にとってため息から鼻息へ跳躍するためのツールでしかなかったのかも知れない。そんなこんなで俺はさいきんこの映画のことばかり考えている。ま、傑作だから色々考えたくなるのだ。
斎藤慎一「戦国時代の終焉「北条の夢」と秀吉の天下統一」を読んだ。
小田原の北条は、そろそろ天下が統一されるヨ的空気も読まず関東覇者の夢に邁進していたというハナシだ。著者の斎藤さんはそうは書いてないけど、北条が関東覇者にこだわるのは鎌倉公方という足利幕府的価値観に囚われたためだろう。
「ソーシャル・ネットワーク」観ていない人には唐突な飛躍で恐縮だが、あの映画に出てくる双子のウィンクルボス兄弟と北条親子は同じ穴のムジナだと痛感した。連中はたしかに鼻息側にいた。けど、鼻息に充足するあまり時流に乗り遅れ、はっと気づいたときは、ため息側だったのだ。けど、俺はそんなウィンクルボス的な北条親子を嗤おうとは思わない。むろし愛おしくさえ感じるのだ。
人は好むと好まざるに関わらずゲーム盤の上にあるのかもしれない。最初下手を打っていたが、要領飲込み次第次第に勝ち始めた。が、ある日を境にトンと勝てなくなる。四苦八苦した末に別のゲームにすり替わっていたと知り、愕然とするというような。
ある種の人生訓として肝に銘じたい気もするが、仮に銘じていたからとして回避できない災難ってあるよな、アハハて思わず笑いたくなるような奇跡的不運、ウィンクルボス兄弟や北条親子を直撃したのはそんな晴天の霹靂だったのかもしれない。
フェイスブック 若き天才の野望 (5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた) | |
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