○行間から春の匂いがする ー 赤坂英一「キャッチャーという人生」感想


新聞、テレビ、ラジオなどのマスメディアは、ボクも含む野球ファンに日々の試合結果と殊勲選手の勇姿を届けててくれる。時と場合によっては、一面を大きく割き、デカデカとその活躍を祝うこともある。
けれど、そうした一面を飾る資格もつ者はプロにおいても、ごく僅かのスターに他ならない。そこそこの選手のまぐれの値千金のプレーで逆転勝ちしても、それがスポーツマスコミにとって値千金とは限らないのが実情だ。
赤坂英一「キャッチャーという人生」。
キャッチーたちを取材したスポーツノンフィクション。敢えて「野村ID野球の申し子」、古田敦也以外のキャッチャーたちに焦点した点に本書の意図がみえる。著者の赤坂は元・日刊現代のスポーツ記者。
水沼四郎の後釜をめぐる達川と山中の正妻の座争い。
山倉引退後、「ダメ」の烙印を押され続けた村田真一のホントの実力。
才能十分スター谷繁の挫折とそこからの踏ん張り。
現役引退後、08年古巣打撃コーチに就任。キャッチャー目線の配球読み理論を選手に説き、西武を日本一に導いた影の功労者デーブ大久保
そのデーブから、「ナルシスト」とその強気リードを評されるロッテ里崎。
たしかに里崎、08年シーズンオフの秋自己プロデュースのディナーショー(大人1万2000円、こども6000円)を開催、熱唱したらしい。真性のナルか極度の能天気か。そこが陽気でイイというロッテファンもいるだろうし、デーブのように捕手経験者的には目がキビシくなったりもするのだろう。
里崎智也。意外なことにその師匠は達川に正妻争いで敗れ、チームを転々とした山中だった。そうまさに里崎は山中の愛弟子だったのだ。ならば、ヤツがナチュラルボーンなナルであるハズがない。
先にも書いたが、この本にはキャッチャーばかり出てくる。印象的には、戦隊ヒーロものの黄色ばかりが結集し、イエロー軍団を編成したみたいな感じ。えっ意味がわからん?まぁじゃ意味がわからんついでに言うと、戦隊モノの黄色って「ひょうきんキャラ」と相場を決まってるわけだけど、じゃイエロー軍団が「俺たちひょうきん族」になっちゃうかっていうと、そうでないってコト。
つまり、キャッチャー気質ってのは、在るようで無い。達川も村田も山中の谷繁も全然バラバラの個性なの。ただ、キャッチャーって正妻がしっかりしてると、もう控えってホント控えでしかないわけ。江口寿史「すすめ!パイレーツ」で、体が壁みたいな立方体になってしまったブルペン捕手がいたけど、アレは笑えないギャグなんだよね、チーム事情ってのが個々のキャチャー人生を左右するのホントなんだから。もう技能云々でじゃない。正妻がバシッいるチームじゃ、どんなに才能豊かでサエた若手も控えに甘んじるしかないという。。。非情というか、なんちゅうか。
そういう環境を考えると、山中のチーム渡り歩きってのは、運命にあがなうヒーロ―的勇姿っぽくもあるね、なんだかね。
「キャッチャーという人生」、筆者がこの本にこめたメッセージは、
古田ばかりがキャッチャーの正解ではない!
ってことか。
巨人を倒したいと中日残留を決意した谷繁、監督が代わり、西村体制が始動するロッテの里崎、打撃コーチに復帰するデーブ。来シーズンそれぞれの飛躍的活躍が楽しみでならない。春が待ちどおしい。


キャッチャーという人生
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