○うちの本、本屋さんの目立つ場所に平積みしたい!で、どうしたらやってくれるのか?


http://q.hatena.ne.jp/1250656920

本屋さんの店員をやっていらっしゃる方に質問させてください。
本屋の目立つところにおいたり平積みにしたりする本はどのような基準で選んでいるのでしょうか。
またそのための方法やコツなどもありましたらお教えいただけますでしょうか。
以上、よろしくお願いいたします。


質問者の方はちょっとミスったぽいです。この質問、たぶん本屋さんに訊くより、出版社の営業さんに訊いた方がより納得いく回答を得られたはず。
それにしても、何故そうした問いを投げかけているのか、背景がよくわからないのでアレですが、おそらくこの質問者の方、著者じゃないかと思います。まあ、シゴトに燃える出版営業中途採用の方という可能性もゼロではありまんせんが十中八九、著者の方でしょう。で、お書きになった本は、ビジネス関係のハウツーものじゃないかと推測します。
つまり、自らのキャリアと経験をふまえて上で書かれた、会計、コーチング、財テクなどについてのノウツー本の著者の方だと思います。ま、兎に角この道何年のライターさんってことはないでしょう。プロのライターさんなら出版流通や出版社のシゴトについてある程度ご存知はずだし。
要するに、「目立つ所の平積み本はどうやって選定されるのか?」という質問は、書籍流通の仕組みと無関係な立場の素朴なギモンだということです。
目立つ所の平積み本はどうやって選定されるのか?
本屋稼業から足を洗ったぼくですが、出版社さん目線を交えて質問にこたえてみたいと思います。ただ既に回答は〆切なので、当エントリーが回答もどきとなります。

出版社のシゴトは「本を作り、売ること」です。その為には、本を売るための「仕掛け」をしていく必要があります。
新刊を売る「仕掛け」は、まず東京で沢山売ることです。
東京の本店とか実質的な本店で売れれば、その実績をもとに大手書店さんは各店に平積むよう指示が本部からなされます。また、「○○書店本店1位」と広告をうつことで、地方の老舗書店さんもその本を積極的に展開したいという気分になったりします。新刊が化けるか否かは東京でどう売れだけ売るかに掛かっているのです。以下は、「東京で売る」ための仕掛けの一例です。

メチャメチャ零細な出版社さんはムリかもしれませんが、毎月コンスタントに新刊だせる出版社なら、八重洲さん、丸善さん、紀伊国屋さん、ジュンク堂さん、三省堂さん、ブックファーストさん、リブロさん等大手書店各社の自社本売り上げデータをそれぞれ買ったり、貰ったりしてるはずです。
出版社は来月出る自社のラインナップのなかのイチオシを考えます。ま、自動的にコレが売れんと困る!的な本がたぶん選ばれると思います。
来月イチオシ本が決まると、くだんの大手書店の自社本売り上げデータを分析し、来月イチオシ本をもっとも売りそうな本屋さんを選定し、担当の営業さんは来月イチオシ本の紹介(チラシやゲラ、表紙カバーサンプル等など持参で)と多面展開の依頼に、選定した書店に出向きます。
選定された本屋さんサイドの仕入れの責任者は、営業さんのチラシや表紙カバー見本、本の売り込みを聞き、ああコレはウチの客層にピッタリだとか、「そういえば同じ著者の本を以前100冊仕入れて、2週間で完売したな」と思い出したりします。考えてみれば当たり前です。出版社さんは事前に一番売ってくれそうな書店さんをデータ見比べて判断し、足を運んでいるわけですから。
つまり、来月イチオシ本について、出版社と書店のあいだの販売展開イメージが合致すれば、版元営業さんは、来月のイチオシ本の多面積みの約束を勝取ることができます。もちろん版元営業さんは、確保したスペースに見合う冊数を新刊配本時にその書店さんに送る段取りを取次さんの間でちゃんと詰めるシゴトを忘れてはいけません。

。。。。とまあ、ざっとこんな感じです。出版社営業さんのシゴトはそれだけではないですが、書店の目立つ場所をおさえる件については、だいたいそういう流れで出版社さんが「仕掛け」ていると考えてほぼ間違いないと思います。
そういった意味で、著者の方はまな板の上の鯉というか、出版社の販売戦略上は「蚊帳の外」といった感じかと思います。出来ることは、ブログやTwitterとかで、自著の宣伝をかねて根気よく「踊ってみせる」ことです。
そんなことが売り上げや、書店の販売展開につながるかと疑念をもたれるかもしれませんが、本屋さん、出版社の営業さん、編集さんなど出版業界で働く人たちは面白い書き手に半端なく鼻が利くものです。なにもやらないより絶対ましだとぼくは思います。


石塚さん、書店営業にきました。
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