○運命を狂わせる女が必ずしも美人である必要はないと知った。− アレキサンダー・ペイン監督「ハイスクール白書 優等生ギャルに気をつけろ」感想。


◇原題は「election(選挙)」。生徒会選挙をめぐる野心全開の女子と教師のはなし。
トレイシーは、のし上がる気満々の女子。イイ内申もらって大学に行き、卒業後は政界うって出ようかとい
う勢い。彼女にとって、今回の生徒会立候補も将来のためのワンステップ。将来展望的にもこんな高校の生
徒会選挙くらいで負けるわけにはいかない!というのが、トレイシーの正直な気持ち。

生徒会長に手を挙げたのは彼女ひとり。無風選挙の気配。生徒会の顧問で社会科の教師、マキャリスターは
彼女の上昇志向が好きでない。トレイシーの当選を阻むべく彼は、元アメフト部のメッツラーを焚き付け立候補させる。

ポール・メッツラーはアメフトの花形選だったが、足の大けがで選手生命を断たれた男子生徒。父親は社長で育ちが良く、アメフトの名声がある。基本的にナイスガイ。他人を蹴落としてまで前に出るようなタイプでもなく、坊々的な奥ゆかしさを持っている。
メッツラーにはタミーという妹がいる。レズっ気のある女子。意中の相手が自分でなく、兄貴を選んだ腹いせに自らも立候補する。無風状態だったハズの生徒会長選挙が三つともえの様相を呈す。マキャリスターの策が予想以上に実を結んだ感じ。トレイシーも内心焦り出す。

学校を舞台にした選挙の話だが、神の差配がテーマか。選挙前日、三人の候補者は神に祈るシーンは選挙の顛末に神の存在を感じさせる。
翻ってマキャリスター先生は元同僚の妻と浮気に夢中。職務そっちのけで不倫のダンドリをいそしむ。神に祈るどころか俗人振りが本領発揮モード。肝心の浮気相手は来ない。しびれをきらした彼は相手の家に押しかけるが、無しのツブテ。返事を返したのはオンナでなく蜂だった(コレって神の警告じゃないか?と匂わせるエピソード)。

マキャリスター先生。社会科の教師だけど彼自身の行動が果たして彼の板書するような「教科書」どおりでない。というか、彼が不倫を正しくないと頭で理解しながら、その誘惑に勝てないダメな男。
意識の低い凡人が「教師」という仮面をかぶり、それらしく振る舞っていたというのがマキャリスターの実情。けど、社会的な仮面をかぶり、らしく振る舞っているのって別に彼に限ったことじゃない。彼の煩悩はボぼくの煩悩だ。開きなおるわけじゃないけど、立派な大人って一握りもいないんじゃないのかな。そう、誰しも煩悩だらけトンマが社会の大半なんだよ。

野心満々で前途がある女生徒の鼻っ柱をへし折りたい欲望したり、元同僚のカミさんにお熱だったりするのは人間として「間違い」だけど、同時に「間違い」じゃない。というか、その弱さ、煩悩全開さが人間らしい。財産も愛も信用も一切合切失った男はアメリカの懐の深さに感謝し、生きている。けど性根的に改心しているか微妙。ラストの小生意気なガキの挙手は暗示的。でもそれが人間。ビバ煩悩!




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