○年の瀬、恒例の今年の収穫報告の季節。暫定一位はコレ!− 小川剛生著「足利義満 公武に君臨した室町将軍」(中公新書


◇都はひどく困憊し、帝の台所も火の車。宮中行事も滞る始末。
南北朝の抗争がその発端だった。
二条良基は日記を書いていた。事実でなく、そうあってほしい願望を書いたもの。
妄想日記!
頼朝の時代に思いをはせ、足利の将軍も我々の新しい仲間として遊んでくれないかなぁと願望を込めて綴った。
けど将軍の義詮は武家のトップだけを目指し、公家社会には極力関係を持たなかったし、関わる場合もズレズレだった。
義満はちがった。
教養、好奇心、財力、そして野心を兼ね備えた坊々だった。
都の公家社会でもまったく萎縮することなく堂々と振る舞えた。

キタ━━━( ´∀`)・ω・) ゚Д゚)・∀・) ̄ー ̄)´_ゝ`)━━━!!!!
この坊々を見定めたとき、二条良基の胸が高鳴り、内心ガッツポーズしたにはずだ。

良基という演出家と踊り子義満。
宮中という舞台。義満は水を得た魚。ガンガン踊り、優美に舞った。

歌舞伎とか落語とか。襲名披露とか、馬鹿にカネがかかる。
というか、カネをかけて盛大にやることに意味がある。
朝廷の政(まつりごと)とは、襲名披露のオンパレードみたいなもんだった。
神社にお参りしたり、旅行に行ったり、帝を接待したり、されたり。
歌会、寺院の造営などなど。宮中の年中行事が公共事業だった。
気の合う廷臣をピックアップし、連中に担当を割り振り予算を振る舞う。
日記で妄想したことが現実になった!二条良基もさぞやドヤ顔だったろう。

南北朝の動乱で帝の威信はヘロヘロ。財布もスカスカ。
二条良基だけでなく、公家社会全体が羽振りのイイ「お友達」を待望していた。

今谷明の「室町の王権―足利義満の王権簒奪計画」。この本、その反証として読める。
けど、それだけの内容でない。結果反証になっているけど、反証積み上げる過程、そのデザイン力に惚れぼれする。



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