Eテレ日曜美術館石田徹也の回を観る。


日曜美術館「聖者のような芸術家になりたい 〜 夭折の画家・石田徹也」(9月29日放送)、録画観る(参照)。
幽霊以上のぼんやりような不安。夢のなかで被弾しリアルに激痛する切迫感。今生きる人なら誰もが抱えがちな心のイタみを、かすかなユーモラスに具現化した画家石田徹也
デパート屋上の遊具の飛行機、アレと合体した哀愁漂う男の絵(参照)、アレなんかどこかで目にしたことがあるんじゃないだろうか。あるいは、亀梨君主演で映画にもなった「俺俺」て小説の表紙画は、「燃料補給のような食事」だ(参照)。牛丼屋のカウンター、ガソリンのように牛丼を流し込まれる客の背中と店員のうつろな目が印象的。


今回の放送、足利美術館で開催中の「石田徹也展 ――ノート、夢のしるし」(9月7日(土)〜10月27日(日)にに併せ、石田の画業を振り返るもの。
普段の日曜美術館は、番組MCで俳優の井浦新が感想を訥々と喋るものだが、今回そのMC封印し、一般来場者が綴った感想コメントと、石田作品にガツンとヤラレタ歌手、学者、作家の感想で構成。MC新が何を喋るか危惧してたので、これは正解だった。
一般の来場者のコメントに混ざって語る著名人は、一青窈、ロバート・F・ローズ 、ロックバンド・イースタンユース吉野寿(VO、G)、作家の星野智幸というメンツ。なかでも吉野の星野のコメントが良かった。


バンドのCDのジャケに石田の作品「兵士」を採用。サラリーマンを塹壕に身をひそめる兵士に見立てたもの(参照)。以下吉野の感想要約。
「武器がなんなのかも分からないし…。敵がそもそも誰なのかも分からない。生まれてきて、訳も分からずやれやれって言われて生きて来たけど、戦っているけど、なんで戦ってる分からない。なんで傷付いてるのか分からない。その社会との距離の取り方というか、取りづらさというか、取れてなさというか。そういうものに(ぼくが)反応したんじゃないですかね…。」


「捜索」。誰にも知られず孤独死した男。その朽ちた肉体はNゲージと融合(参照)。
以下、星野の感想要約。
「自分(石田徹也)がそうなるかもしれない死というのが具体化に生々しい描かれている。
窓の外のには人影があり、いわゆる日常の世界。窓を通すと白々しく映る。(この死体は)そうした外の「日常」なら逃げている。ひきこもっている。死ぬと腐るはずが、土にかえる死にざまは、外の日常よりこっちが本当じゃないかと思わせる。」


「リハビリ」。逆立ちしながら眠る男。頭部の車輪でバランスとっている。幼児が彼も手を引き、明るい方へ誘っている(参照)。以下、吉野寿の感想要約。
「ふつうに、静かーに絶望してる感じ。希望のようにもみえるますけど、絶望と希望は意外と似てるんじゃないか?光の国みたいのは絶望のなかにある。外にはない、自分の中にある。救いは内側なかにある。外にはない。自分の中にある。光は自分のなかに。もしくは自分の中に見出すしかないんだ。外に光を求めてもそんなものは無い。あきらめ。」



「父性」(参照)。卓袱台をひっくり返して怒る的オヤジとコタツの合体。今回の放送で紹介された石田作品のなかで、ボクはこの絵が一番好きだ。けど、石田を聖者のような画家と捉える文脈では、この絵はあまり相応しくない。面白すぎるから。

「聖者のような芸術家になりたい」という放送タイトル。石田のアイデアノートに書き留められた文句からの引用だ。番組内で「頑張るらなくてもイイと言われてる気がした」的な一般来場者な感想が大きく取り上げられていた。けど、石田本人が、そうした来場者と同じように苦しんでいたとは思わない(石田が苦しんでいたとすれば、もっと現代人のイタさに肉薄したい的な業というべきものでなかったか?)。石田は、苦しみつつ一体何が自分を苦しめているのか分からないという事例を観察者だった。
彼はバイトをしながら絵を描いていた。バイト先で出会う連中が、観察の対象だったのではないか。つまり、石田展で癒されてしまう人たちこそ彼の発想の泉、ミューズだと強く確信した。



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