○キャラクターアイテムとしての趣味。ー 映画「サイドウェイ」反芻。


アレクサンダー・ペイン監督の「サイドウェイ」は好きな映画のひとつ(以前書いた評はこちら)。演出がすぐれてる。とにかく、主人公マイルスのキャラクターを観客に伝える趣味選定が素晴らしい。ワインのテイスティング、この趣味から、作家になりたいという願望から目をそらし、「高校教師」という安定を選択したマイルスって男の人生がだばーっと伝ってくる。基本「臆病な人」設定。

リア充になりきれないタチ。教養もあり、内に秘めた情熱も話していると分かる。バツイチだけどその陰りは、かえって彼を色っぽくみせている。実はモテるタイプ。

けど、マイルスはそんなチャーミングさを台無しにしてきた。バツイチ。嫁さんが出て行ったのも、おそらくマイルスが潜在能力(文才)を潜在したままウジウジしているせいなのだ。
ワインのテイスティングに不可欠な批評的な視点、ある種の「上から目線」。それがマイルスを恋や仕事に臆病にしている。
ワインテイスティングは、前のめりに生きることを自分に禁止する足枷のメタファーだ。彼は批評されることを恐れ、批評する側にまわり生きてきた。要するにワインはワイナリーの作品であり、彼は自分も小説家になりたいと希求しながら、ダメ評価を下されることを恐がりワインを舐めてきたのだ。たしかに気のある女もイライラするよな。

マイルスがアメリカの地ワインにこだわっているのも面白い。「ワインっていったらカルフォルニアしょ!」的な信奉感すらある。彼が小説家志望であることを考えあわせると、その作風をいろいろ想像するのも楽しい。カルフィルニアワインを手掛かりに。


サイドウェイ <特別編> [DVD]
サイドウェイ <特別編> [DVD]
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン 2013-10-02
売り上げランキング : 77885


Amazonで詳しく見る
by G-Tools