○「パシフィック・リム」とか「風立ちぬ」とか「ガッチャマン」とか。話題の映画はわんさかある。けど、今見るべき映画は「恋の渦」っしょ!ー 大根仁監督「恋の渦」感想。


◇「恋の渦」、劇団ポツドールの同タイトル芝居の映画化。ヤンキー崩れとそのツレたち日常を描いたもの。

ゲスで!エロくて!!DQNドキュン)♡。

本作のキャッチコピーに嘘はない。たしかにゲスだし。エロいし、バカ丸出し。俳優陣のなりきりっぷりが尋常でない。ディテール完璧!涙目ぷるぷる説教のコウジ(新倉健太)然り、馬鹿ポジティヴ!ナオキ(上田祐揮)然り、空気読む能力退化した人類!タカシ(澤村大輔)然り。連中のリアルなイタさ、ガシガシ刺さりまくり。ヤバいよ、ニッポンの若手俳優陣!素敵すぎ!

柳原加奈子の総武線の女子高生物マネはじめてみたときの興奮がよみがえった。笑える、バカすぎて。けど哀しい。いそうだもんな、奴ら、ホントに。ユウタ(松澤匠)が一番マシか。けどユウタですらやっぱ友達になるのはムリかも。連中は将来とか夢とか、目標とか。もう端っか考えないようにしてるっぽい。今が面白ければイイや的な空気が仕方なく連中をふんわりくるんでいる。

彼らにとっての賢い生き方、それはひたすら今の人間関係のなかで上手く立ち回ること。そして、メールや合コン、脱法ハーブとかは、カリソメの絆を確認する手段。セックスもその範疇。

この映画、もしかして人間讃歌?コンクリートジャングルな大都会の片隅、強かに生きる若者の環境適応能力に感嘆すればイイのか?違うよね。だって人間は環境を変える知恵があるはずだから。恐竜じゃあるまいし。だけど連中は恐竜方向まっしぐら。讃えられないよね、全然。むしろホーラーだよ。

奴らだってこんな糞みたいな人間関係、好きこのんでつるんでるワケじゃない。映画冒頭のコウジとトモコの部屋で家呑み合コンという場面。あのシーン、連中の世間の象徴。コウジが仲間内の主導権獲りたい欲求から発案した合コン。集まった連中もそんなこと承知。けど、「じゃあ行かない」って選択あるかっていうと「無い」んだよね。全く。オワコン。将棋でいう「詰んでる」ってやつ。

積極的だろうが消去的だろうが、アノ場に集まるしかなかった連中。マヌケ面が雁首揃えのわけだ。うわべは楽しそうに。でも内心キョどってんだよ全員。だけど帰る場所なんてない。ああ、唯一タカシだけ帰るべき場所があった。母親のとこ。田舎の。

ゲスで!エロくて!!DQNドキュン)♡、連中には帰るべき場所がない。セックスは絆を確かめう手段のはず。けど疑心暗鬼の温床になってる。しかもその渦に身を委ねるしかない。たぶん愛が足りない。全然足りてない。母ちゃんが欠乏してる。むき出で世界に産み落とされた、って感じ。可哀想っていうか、当人たちは笑うしかないでしょ。「ウケるっwww」って感じで手叩いて。

あーヤバいよね、ニッポンの俳優陣。演技の体幹ぶっ太いってゆーかさ。そんで。やっぱサあ、ヤバいくない?ニッポン社会。俺らの現実。マジでぇ!