○宮内悠介作「盤上の夜」感想。


◇「盤上の夜」は、六つの作品が収められた短編集。収録作はすべて囲碁、将棋、麻雀などの卓上ゲームにまつわるもの。
表題作は第一回創元SF短編賞(山田正紀賞)受賞。というけど、この短編を読んだ印象としてが、宇宙とかエスパーとか、ロボットとかそういうパキパキなSF色は薄い。
僕の好みは「千年の虚空」。疾走感と構成のバランスがいちばんイイ。
イマイチだったのは、「清められた卓」。麻雀用語が分かりずらいが、小説としては分かりやすい。けどその分かり易さが物足りない。
ツジツマ合わせに終始したせいで、小説パワーを削いでしまった感じ。
そういう意味では、小説パワーに誘われ作者が書いてしまったのが、表題作「盤上の夜」じゃないだろうか。
手足のない女流棋士数奇人生のおはなし。消息不明だった彼女の居場所を突き止め、対局の際彼女の石を打っていた先生と病院を訪ねるシーン。
「身長がだいぶ伸びましたね」
先生の一言、これがすごくイイ。頭先行のツジツマ合わせばっかりやったらこの台詞は出ない。まあ、とにかく由宇は一度でいいから先生を抱きしめたかったんだよね。
「千年の虚空」。主人公たちが住んでいた「落合の家」について。棋士といった人種の脳に見立てるくだりがイイ。落合の家の描写がそのままこのハナシのテーマを語る仕掛け。なんだけど、メタファーとしての「棋士の脳」のインパクトも捨てがたい。


盤上の夜 (創元日本SF叢書)
盤上の夜 (創元日本SF叢書)宮内 悠介

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