ジェイソン・ライトマン監督「ヤング≒アダルト」感想。


◇アラフォー女が生まれ育った街への「凱旋帰国」し、ひと騒動起こすハナシ。
予想外にいたってコメディーっぽい。「ヤング≒アダル」、完全に女版「寅さん」!

中高生向け小説の作家メイビス(シャーリーズ・セロン)、運気が下がり気味のアラフォー女。
シリーズ最終話、締め切り間近だがなかなか筆が進まない。催促の電話もガン無視の日々。
そんなやさき、目に留まった一通メール。元カレからの赤ん坊誕生パーティーへの招待状。彼女は元カレからのメールに新たな予感を感じ、田舎に舞い戻る。


虚勢というとより自分は売れっ子作家と信じ込んでるむきがイタいメイビス。セレブ気取りの勘違いがイタさの根源。なかでもダントツは、元カレが自分とヨリを戻そうと思っていると直感していること。イタさもここまで極めると壮快ですらある。
中高生向け小説の作家という彼女の肩書きは、メイビスが未だモテモテな女子高生だった過去を引きずり、そこから一歩も出ていないことを暗示している。

居酒屋で出会う同級生マット(パットン・オズワルト)。彼は高校時代のリンチ事件が原因で杖をついている。
辛酸な過去は過去、今は自家製ウイスキーを作ったり、フィギュアを自分仕様で組み立てたりと趣味を謳歌する彼。マットは自分の運命を受け入れる大人として描かれている。

メイビスとマットは対極の存在。けれどメイビスが抑圧するもうひとりの自分としてマットは機能している。
メイビスに憧れるマットの妹もまたメイビスの心の声で、「今のままのアナタでいいのよ、まわりが馬鹿なだけ!」とそそのかし、鼓舞する。まさしくアダルトとヤングが彼女のなかで戦っているいう感じ。

というか、かつての彼女も同じような手順を踏んで街を捨てるように出て行っただろうことが想像される。つまり成長のない女としてメイビスはあるのだ。

女版「寅さん」。僕がこの作品も本質はそれだと思った。そうすると、シャーリーズ・セロン渥美清か。全然見てくれは違うけど。
シャーリーズ・セロン渥美清視点で眺めれば、当然さくら役の倍賞千恵子パットン・オズワルトとなる。なんか面白い。
ヤング≒アダルト」。メイビスは自意識過剰のバカ女だけど、憎めないキュートさがある。彼女の生まれ故郷、マーキュリーはミネソタにあるという設定の架空の街らしい。柴又の寅さん像のように、シャーリーズ・セロン像が街に建立されることはないのか。残念。



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