森田芳光監督「僕達急行 A列車で行こう」感想。


◇「僕達急行 A列車で行こう」はコメディ映画。監督は、「家族ゲーム」や「それから」、「失楽園」などの森田芳光。本作が遺作となった。
「僕達列車〜」は、監督自身の鉄道趣味を反映したものらしい。脚本も自前で、随所に森田節が炸裂している。
森田節といっても分からんかもしれないが、「メインテーマ」や「そろばんずく」にみなぎるアノ感じ。もう初っ端から炸裂。アノ感じが爆ぜまくっている。

余談だが、かつて住んでた東武東上線沿線の商店街に中華屋があった。メニューのどれを食べても旨い店だった。けど、ただ一品、雲呑だけは激マズだった。たまたま俺の調子が悪くて不味く感じるのか?と思い、ワンタン、何度か注文んでみた。けどその都度確実に激マズだった。この一貫した不味さに、ボクは店主の意志を感じた。これは確信犯的な味付けなのだ!と。

ボクは、森田芳光の作風を激マズと言いたいのではない。一見ユルユルな感じでもきっちり意志あるとこが、毎度激マズな雲呑を想起させるということだ。

ボクの見立てでは森田映画は、いくつかの透明なレイヤー(層)で構成されている。レイヤーは、場面、台詞のない役、台詞ありの脇役、台詞ありの重要な脇役、主役という具合に積みか重ねっている。

今回、瑛太松山ケンイチのふたりがメインキャスト。彼らふたりは同じレイヤーに居る。だから会話もスムーズ。けど、レイヤーをまたぐ場合、主役と脇との会話は往々にギクシャクする。貫地谷しおりのガールレンド然り、笹野高史の父親もしかり。台詞の意味を取り違えたり、会話のウラにある意味を取り逃がしたりする。

森田監督は、主役とからむ場面でも脇役陣におのおのの役柄が帰属するレイヤーに併せた演技を注文したと思う。主役の芝居に受け身をとることをが普段やってることだろうから、このレイヤー併せは無茶ブリな骨折りだった思う。まあ、ボクの森田映画多重レイヤー説が採るという仮定のハナシだが。

脇役陣でピエール瀧は異色だった。彼は上手さを買われた抜擢ではない。異分子として投入されたっぽい。
実際、彼の演じる健康食品会社社長は、レイヤーを飛び越える役回り。九州弁の社長というベタすぐる役、彼は関門海峡を渡らない頑固ものだったが、小町(松ケン)の熱意にほだされ上京する。そして彼らの前にふらっと出現する。
この場面の瀧が演じる社長、滅茶苦茶血が通った人になる。ぞわっとする。ベタなレイヤーから主役と同じレイヤーにジャンプした瞬間とボクは感じた。



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