平田オリザという事件 ー 想田和弘監督「演劇 I」、「演劇 II」感想。


想田和弘監督「演劇 I」、「演劇 II」を観た。
演出家の平田オリザと彼の主宰する劇団青年団を描いたドキュメンタリーの連作。
「演劇?」は、俳優たちを演出する平田の姿にフォーカスしたもので、「〜 II」のほうは、劇団運営のための助成金獲得に八面六臂に驀進する平田の姿を追ったもの。
IとII、併せて6時間ほどの長尺なる。けど、全く飽きさせない。というかまさにア!という間の映画体感だった。
平田オリザは、正真正銘のカリスマだ。いや、アゴラ劇場いう国の元首というべきか。ニコニコしたおばちゃん顔の背の低いオジサンは実はハンパ無いオーラまとっている。オーラはカメラにも映らない。けど、平田を取り巻く状況、人々の様子をみれば、彼が君臨する王であることは一目瞭然の事実だ。
想田さんが懸命なのは、サバンナのライオンを撮るような物理的にも、心的にも一定の距離間で死守したこと。これがオリザのカリスマにヤラレることなく、平田オリザを撮りきれた肝だったろう。
この連作は、平田オリザという「事件」というしかない出来事をカメラが捉えたものだ。観客は、その事件を目撃する。
そして映画が終わり席を立ち、劇場を出、とっぷり暮れた空を見上げるだろう。それから、駅に方向に歩きつつ、今この時も「平田オリザ」なるものが進行形であること気づき、腰を抜かすはずだ。
恐るべし、平田オリザ。恐るべし、「演劇」 Iと II、傑作!