クリストファー・ノーラン監督「ダークナイトライジング」感想。


◇「ダークナイトライジング」観た。マイケル・ケイン演じる執事アルフレッド、今回大分出番が多くて妙だなって思ったんだけど。。。そう来るか!と膝を打った。
前作「ダークナイト」から8年後のハナシ。デント法(前作で死んだトゥーフェイスの名前にちなむ)。犯罪者を厳しく取り締まる法律施行された都市、ゴッサム。犯罪者に容赦ないこの街は平穏そのものだった。
けれど、その安寧は上っ面だけのもの。ゴッサムの地中、ヤバい奴が私兵を束ね、一発逆転にむけ着々と手はずを整えていた。
バットマンことブルース・ウェインクリスチャン・ベール)は若くして隠居のご身分。が、女泥棒(アン・ハサウェイ)の闖入をきっかけに眠っていたはずの正義魂がむくり、とアタマをもたげる。
たぶん、今回遺産がテーマ。別にそれは金だけを意味しない。地位や名誉といった見えない遺産もある。そして、人も。
遺産相続で莫大な財産を相続し、その資金力を後ろ盾に一人自警団バットマンとしては正義を遂行していたブルース。
「金持ちである故に果たすべき社会的責務がある」というのが彼の持論っぽい。けれど、執事のアルフレッド(マイケル・ケイン)はそうは見ておらず、
「責任でなく、アナタは贖罪として身を捧げるつもりでないか?」
という意味のことを言い、詰め寄る。
たぶんアルフレッドの諌言は的を射ている。ブルースは平和に飽いてた。隠遁生活に終止符を打つキッカケとして常軌を逸した悪を、心のうちで求めているのだ。ゴッサムの地下、機会をうかがうベラボウな悪は、実はブルースが切望して止まないものだったのだ。
執事のアルフレッドもブルースのもとを去る。死に場所を探しているご主人に仕えるなんて耐えられない、と言い残して。破産で文無しになった今、ウェイン家資産の権化というか、人的財産というべきアルフレッドとも袂を分かつブルース。。。果たしてバットマンの運命は否、ブルースの正義、その行方は?
練りに練られた脚本、凄ンごっいデス。けど、ああいうカタチで纏めちゃうと、悪の権化ベイン(トム・ハーディ)が切ないっていうか浮かばれない。ベインって呼び捨てできない。ベインさんってサン付けしちゃいそう。そんな気分。いや、ジョーカーはやっぱジョーカーなんだよ、敬称なく。
つか、ペイン、奴に相応しい花道的な最期やっぱないとダメだよね、これ。悪党振り、さんざん盛りに盛ったのにスカシっ屁でオシマイじゃ、ケツむずむずだよ。
結局どっちを優先するかで、おはなしの、全体的なプロポーションを優先したんだよね。その分ワリをくったというか、ベインのキャラ的魅力を十分描けなかった、という感じ。
そういえば、前作「ダークナイト」はジョーカー役のヒース・レジャーに作品丸ごと乗ったられた感バリバリだったよ。ひょっとして、今回ベインの花道的最期なしのキャラ弱め演出、同じ轍を踏まないためのノーラン監督の深謀遠慮じゃないか、ってのはやっぱ考えすぎか?