武田勝という醍醐味。

日本ハムファイターズ武田勝は面白い投手だ。3年連続の二桁勝利(2009〜2011)。今期は味方打線がアレで、5勝と勝星はさほどだが、1.87という防御率を誇っている。立派なものだ。
彼の活躍を眺めていると、ピッチャーがボールを投げるという営みにおいて150キロの豪速球や凄い変化球は、刺身のツマみたいものか?という気がしてくる。
三振をガシガシ獲るようなタイプではない。相対する打者の打ち気を察し、球の緩急で打ち損じを狙うタイプ。ボクの見立てでは、武田勝は相当な強心臓だ。まあ、投手なんて大概心臓に毛が生えている連中だろう。けど武田勝は球威はない。そう、彼は球威無いくせにマウンドに立つのだ。度胸満点だ。というかやっぱ尋常でない。当然心臓は毛むくじゃらなはずだ。
強心臓なくせにフニャフニャ投球のサウスポー、それが武田勝。けど、なぜ彼が第一線で活躍できるのか?
たぶん打者連中は、野球マンガのエースのような分かりやすい速球投手の速球をバカーンと打つ方嬉しいんだと思う。そして、周りものマンガのエースの、マンガのような速球を打ち返した彼らを賞賛するのだと思う。
つまり武田勝は打者からすれば、打っても見返りの少ない「美味しくない」投手だと思う。あるいは、「いつでも打てそうな」投手。とにかく一等最初に打ってやりたい投手ではないはず。要するに武田勝って投手は野球マンガのエース像から外れれた存在なのだ。
見方を変えると、速球主体の投手がいるからこそ、彼のようなフニャフニャ系も活きる、とも言える。バリエーションっていうかね。人生ってそういうもんだ。
武田勝の場合、ピッチングはバッターボックスに入った打者を観察ことから始まる。強打者か、ちょこん当てて内安打を狙いか、ヤマはりタイプで外角狙いか、あるいはストレート狙いか等など。一球毎に打者の様子を見る。そして、キャッチャー大野のサインを見、ああやっぱり大野も同じように感じているなと納得し、投球動作に入る。観察し投げ、観察するの段取りを一球毎にやるのが武田勝流のピッチングなのだ。
勝負は投げる前から始まっている。というか、投げる前段階で勝負の大半は決しているという気さえする。躍動感あふれる投球フォーム、投じられた圧倒的な速球、空振り三振に仕留めマウンドで咆哮する等など、むろんルックがイイ、華があるのはそっちだろう。けど、投球動作以前の武田勝を観ることは、ボクの野球観戦道楽のなかで得難い醍醐味になりつつある。