本郷和人著「謎とき 平清盛
(文春文庫)


◇本郷さんは日本中世史が専門の東大の先生。「石井進氏、五味文彦氏に師事」と本書略歴にあり、大体のスタンスも分かる。
で、本郷さん今回の松山 ケンイチ主演のNHK大河ドラマ平清盛」の時代考証にあたっており(実は二人体制で、もうおひとりは高橋『清盛以前』(平凡社ライブラリー)昌明先生)、一般向けの清盛本である「謎とき 平清盛」は、大河ドラマのサブテキストという感じ。
読んでみようと思ったキッカケは大河ドラマ観ているから。巷では視聴率がどーたらとか不人気話題が沸騰しているが、実際観ると結構面白い。三上博史演じる鳥羽院はサイコーだし、清盛の父忠盛の中井貴一、サエナイ源氏棟梁為義の小日向文世、後白河の松田翔太、美福門院の松雪、堀河局のりょうなどなど脇の役者陣が素晴らしい!佐藤義清の藤木直人すら輝いてみえるんだからコレを神キャスティングと言うわずして何が神キャスかいうべき出来映え。極楽トンボ加藤の海賊は。。。まぁ、あれこそ神の御心というものだろう。
けど大河観てて、なぜ時代考証が二人体制なのか?というギモンはどんどんデカくなった。意見が違う点はどのようにNHKは対処しているか?現場は混乱しないのか?ジワジワと気になり始め、手にとった次第。
今回の大河「平清盛」。源平ガチ戦の勝利で鎌倉幕府樹立じゃ!と威勢いい頼朝(岡田将生)の内なる声がドラマ進行のナレーションになっている。内なる声というのがミソで、表立っては言わんけど清盛ってやつが大した漢だったと偉業を回想する調子。ボクらは鎌倉幕府で武士による政権が出来たと学校ならった。
けどこの頼朝は、清盛こそが武家政権をなした先魁と考えているのだ。要するに、ここが今大河が提示する肝になる清盛像だ。
本書を読むと、本郷、高橋お二人とも清盛こそ武家政治の先魁論の立場あるようだ。両氏の相違は清盛政権は何時開始されたかという時期を巡るもの。六波羅幕府を唱えるのが高橋さんで、本郷さんは遷都後の福原幕府の立場。大河的にどう料理されるか興味津々、と言いたいが、たぶん曖昧ぼかされるだろうなとビンビン予感している。
今回の大河、義朝の関東下向の場面の荒っぽさがちょっと気なっていた。アレは全然高橋見解を反映してないが、本郷見解反映とも言えないような。。。。結局ドラマの都合が優先した演出なんだろ、と。大河ドラマは史実再現の研究プレゼンでなく、一般視聴者向けのドラマ。だから時代考証ガチガチでお茶の間置いてけぼりなっては元も子もない。まぁ、娯楽の本義を忘れちゃいかんわけでね。
そういう塩梅でNHKさんは、鎌倉幕府以前に武家による政治はすでに始まってたんだよ!という教科書の教えない歴史をお茶の間に紹介したかったのかも。今回高橋、本郷の両氏が揃って時代考証に招聘されたのは、どうやらそう云う道理っぽい。


謎とき平清盛 (文春新書)
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