○映画「モテキ」感想。


◇ドラマ版「モテキ」みたとき、藤本幸世(森山未來)の心の声のダメぶりに圧倒された。
体温低そうなのルックスに相反し、内面は汗だくな饒舌キャラ。煩悩全開に自分保身を語りまくる身もフタもなさがある種壮快だった。
幸世の心の声。その語りっぷりは一見突き抜けいる。けど、それはポーズに過ぎない。ヤツは好意を寄せる女の子が自分をどう思っているのかに悶々に明け暮れている。四六時中グルグルと悶々している。しかも徹頭徹尾に受け身。「愛されたい」に支配さえた自己チューの権化というテアイ。
映画版「モテキ」を観た。ドラマ版から1年後の新たな恋の予感、セカンド・モテキ到来が幸世に試練を与えるというストーリー。試練の先にあるのは成長だ。
つまり映画版「モテキ」はドラマと違い、藤本幸世の成長物語としてある。けれ、汗だく饒舌な幸世の心の声は健在。そのダメキャラの揺るぎなさが、成長物語の映画版では障壁となっている。
察するに、作り手サイドは幸世の心の声のキャラ立ちの強さに試行錯誤し、推進力としては無敵の語り手をどこかで捨てるべきだという結論に行き着いたのだろう。
当たり前だが、心の声と幸世自身はシンクロしている。幼なじみの島田(新井浩文)の忠告を真に受け、碌な女じゃないとみゆきから距離を置こうとする態度、あるいは土砂降りのなか、ドアどんどん叩き「云いたいことあるんだ」と怒鳴ったにも関わらず、開いた瞬間シドロモドロになる幸世。それらは幸世の心の声から想定しうる行動パターンのなかにある。
逆にいえば、その声を振り切る瞬間幸世はこれまでの自分から抜け出せるわけだ。そのとき、観客は幸世の心の声が世界を語り損ないっぱなしだったことに気づくはずだ。みゆき(長澤まさみ)を発見し、幸世の心の声が彼女を横綱級に語り損ねていたことに気づくだろうし、彼女視点でこの恋愛を眺め、ふたりの恋のゆくえに何か思うことがあるはずだ。映画版「モテキ」を観ること、それは信頼できない厄介な語り手からみゆきを救出し、彼女視点でこの恋愛を語り直すことを意味する。


モテ記 〜映画『モテキ』監督日記〜
モテ記 〜映画『モテキ』監督日記〜大根 仁

扶桑社 2011-09-15
売り上げランキング : 288

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

関連商品
モテキ的音楽のススメ 映画盤
モテキ的音楽のススメ Covers for MTK Lovers盤
モテキ的音楽のススメ MTK PARTY MIX盤
モテキ<Blu-ray BOX(5枚組)>
IQUEEN VOL.1 長澤まさみ (PLUP SERIES)


H (エイチ) 2011年 10月号 [雑誌]
H (エイチ) 2011年 10月号 [雑誌]
ロッキング・オン 2011-08-18
売り上げランキング :

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

関連商品
ピクトアップ 2011年 10月号 [雑誌]
Cut (カット) 2011年 09月号 [雑誌]
Cinema★Cinema no.33[シネマ☆シネマ no.33] 2011年 10月号 [雑誌]
Lips (リップス) 2011年 10月号 [雑誌]
シネマスクエアvol.40 (HINODE MOOK NO.76)