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○駒と野心
◇スタローン熱再燃。思わず「エクスペンダブルズ」をDVD観賞。監督も兼ねるスタローンは俳優としては抑え気味で、それが映画に箔をつけている。
間髪入れず展開されるアクションシーンは圧巻。痛快このうえない。が、それとは別にクリスマス(ジェイソン・ステイサム)とカノジョの心のすれ違いを描くシーンも印象的。コノ手の映画にしてはそつなく、けど情緒的で、美しい。タイトルの「エクスペンダブルズ」は消耗品軍団の意味だが、クリスマスは捨て駒野郎にしてはナイーブに描かれすぎ。つまり、実質「ジェイソン・ステイサム主演」としてこの映画はデザインされていると思う。
役柄ではチームリーダーでありつつ、映画的には脇(捨て駒のひとつ)という自身キャスティングに俳優バカでない冷静な監督スタローンの視点を感じた。
◇有馬哲夫「原発・正力・CIA」読了。合衆国公文書に収められた「正力松太郎ファイル」CIA文書をもとにしたノンフィクション。福島原発のゲンナリする今の状況もさかのぼって突き詰めていくと結局このオッサンなのか!と更にゲンナリする原発導入にからむ政界内幕もの。
アメリカの水爆実験で生じた第五福竜丸事件は、日本中の「反核」、「反米」機運を否が応にも高めた。冷戦下、極東戦略上日本の離反は国益を大きく損なうおそれがあったCIAは、メディアを通じた大々的核の平和利用キャンペーンで世論誘導をもくろんだ。
その際、彼ら白羽の矢を立てたのが読売と日テレの絶対的首領である正力松太郎、その人だった。
元来原発など興味もなかった。当時の正力が夢中だったのはテレビネットワーク帝国建設だった。日テレを足がかりにアジア一帯をおさえる魂胆だった。日テレの「日本テレビ放送網株式会社」という正式名称はそうした大局を見据えたものだった。
しかし、彼のアジアメディア帝国構想は海千山千の駆け引きや無謀なゴリ押しも祟り前途多難を極めた。そんな折CIAが持ちかけた「原子力の平和利用」。正力は不意にその可能性を見抜いた。原発推進の旗ふり役として日本を束ね、顔を売ることに自身の政治的栄達を予感した。
「原発の父」正力松太郎の誕生。それはアクの物凄く強いオッサンが最高権力の座を夢みた棚ボタ的千載一遇のチャンスだった。。。
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