○別の物語に放り込まれた「語り手」


◇焼き鳥で夕飯。隣席のサラリーマン風五十代男三人。結構豪勢に食べている。漏れ聞こえるところから察するに自動車関係の部品メーカーのA社とその下請けB社というかんじ。時期が時期だけに震災のハナシもちらほら。けど、話している内容は「工場がどーしたこーした」と仕事関係に終始し、野球談義と代わらぬ無難さをキープ。こりゃ完全シゴトの延長で呑みにきてるんだなとちょっとビックリした。ま、福島の原発が不穏な空気醸している昨今、仕事に忙殺されたりその延長で吞ミニケーションなんてのが精神衛生上好ましいのかもしれない。


◇録画の「しゃべくり007」視聴。 急性すい炎で番組を休んでいたチュートリアル福田が復帰。かなり痩せた印象。


◇「神器 軍艦「橿原」殺人事件」上巻読み中。二次大戦末期、日本海軍の軍艦「橿原」を奇怪な気配ムンムンの洋館に見立てた推理小説の体裁。
奥泉作品の魅力といえば文体模写だが、本作でもその自在闊達ぶりは健在。
軍艦「橿原」乗船を命じられた年期の浅い下仕官の「俺」は、人は善さそうだが軍人向きな性質ではない。飄々としているといえば聞こえはいいが時勢に逆らわないというのが世を渡る術という手合い。で、「俺」こそ本作の語り手なのだが、トントントーンと小気味いいリズムで語る。漱石の、まるで「坊ちゃん」の「俺」ように。
そんなわけで、語り手「俺」は、ディクスン・カー風奇怪探偵小説に不向きも不向きなのだ。というか、この絶対不向きな語り手が奇怪雰囲気ムンムン推理小説を語ると、どんな化学変化がおこるかな?というのが本作の趣向なんだろう。


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