柳家権太楼「鰻」を聴く


落語「鰻」は太鼓持ちの噺。
芸人というと昨今は漫才やコント、モノマネなどを披露するそれを指すが、かつて花柳界にも生息した芸人もいた。太鼓持ちとはお座敷芸人で、芸者をあげてのお座敷遊び、その盛り上げを生業の男を指す。今風にいえばホスト。だが太鼓持ちの場合、客筋は羽振りのいいオッサンに限られた。
座布団に座っていくつかのレパートリーを聴かせるという噺家。これも商売というにはずいぶんな能天気な部類だが、太鼓持ちのお座敷遊びのMC的なポジションで食っいくっていうのだから心臓に毛がボーボーか、アタマのねじが足りないかのどちらかだったかもしれない。しかし水商売と決めつけるのはアレで、江戸の往時、サケを飲むにも粋に遊ぶのが大店の旦那衆のタシナミだったろうから、江戸っ子の端くれとしてマスター・オブ・セレモニーとしての矜持っていたと推測する。
権太楼という人は、実は噺よりも枕が魅力じゃないかとボクは思っている。というか、本来権太楼はスロースターターで、座布団座ってからエンジン暖っまるのが遅いタチかもしれない。ま、この「鰻」は枕たっぷりで御の字だ。今どきのテレビのグルメレポーターは、太鼓持ちの末裔だいう見立ても底意地悪い権太楼らしくてイイ。これが後々効いてくる。イヒヒ。


柳家権太楼 名演集1 疝気の虫/鰻の幇間柳家権太楼 名演集1 疝気の虫/鰻の幇間
柳家権太楼

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