須藤元気「幸福論」感想 ー「答えは常に自分のなかにある」の冒険


須藤元気は元格闘家。現在はタレント稼業と母校拓殖大学レスリング部の監督という二足のわらじの人。
本書「幸福論」は、お遍路巡りの紀行文という体裁。
お遍路を巡るというのは、それなりの動機というか覚悟が必要だろうとボクは思っていた。けど「幸福論」を読むと、須藤はちょっと遠足にでも出掛けるような調子でお遍路にのぞんでいることに驚く。
やはり格闘家やってただけあって体躯の出来が違うのだろうか。
ま、多少は違うかもしれんが、やはり須藤流の美意識が根底にあると思った。
無鉄砲、ガムシャラにぶつかるなんて行為は彼にとってもっともダサい、醜い行動だと思っていると邪推してみたい。
須藤は何事であろうとつねにゴールを決め、それを成し遂げるための段取りを逆算して組み立てるタイプだろう。上達とか目標達成ということに価値をおくというか、自らの立てた段取りを順々にクリアしていくのことに、ある種快感をいだくタチ。
立身出世というゴールは、ふつう金持ちとか立派な肩書きとかに落ち着くのが相場だ。
須藤がそうした俗な栄達と無縁なのは、ひとえに彼の美意識のせいだ。「須藤元気」を謳歌し切ること!これこそが彼が立てた人生ゴールだ。格闘界でもそうであったように、勝ちを引き換えにしても須藤スタイルを披露しなければならないのだ。
おそらくお遍路巡り本のオファーをうけたとき、須藤は出来上がりの表紙や前口上や使えそうな空海についてのエピソード等など「幸福論」の青写真がパッと見えたはずだ。
人は自己というクビキから逃れられないし、逃れてはならない。なら、その自己を思い切り活かせるよう努力すべきだというメッセージをボクはこの本から受け取った。テコの支点を見極め、勢いをつけて棒の片方にドンとのる!それが須藤のいう合理であり、「幸福論」だ。


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