ピーター・ジャクソン監督「ラブリーボーン」感想


映画「ラブリーボーン」は、女の子の自己紹介から始まる切ない話。監督は「ロード・オブ・ザ・リング」三部作の名を馳せたピーター・ジャクソン
この世に未練あるため成仏(?)でいる14歳の女の子スージーの魂の話。彼女は自分が死んだと云うこと自体よく吞込めてなかったりする。むろん突然命を奪われたのだからその戸惑いは当然だけども、彼女はなんで現世にサヨナラを云えないのか、自身の未練がいったい何なのか分からずあの世とこの世の境で悶々としている。有り体に言えば、彼女が自身の未練を見極めるその過程を描くことが本作の眼目だと思う。
主人公のスージーの魂は、この世の家族や自分を殺した犯人に対してスーパーナチュラル的な力を振ったりしない。彼女の魂は実に14歳の少女的然したガーリーな存在なのだ。彼女は典型的な14歳の女の子だ。肉体を失ったという事実を除いて。
似た題材の映画として「ゴースト NYの恋人たち」が思い浮かぶ。実際、本作はフガフガな「ゴースト NYの恋人たち」という見方もできる。十中八九、監督は意図的にそうしている。
スージーと彼女の妹リンジーは対の関係で「魂と生身」、「向こう側と現世」、「断行と躊躇い」の関係を担っている。生前のスージーははしごを下ったが、リンジーは階段を登る。
スージーは復讐のために霊験を発揮する魂でないのは、それが分身であるリンジーの分担のためだろう。というか、阿吽の呼吸でそう分担されたのか(つーかリンジー視点だと、この話けっこうベタだったりする)。
そんなこんなでスージーは自身の未練の芯にたどり着く。で、クライマックスに納得できるか否かは、それは見る側の魂のガーリー度によるだろう。
というのは嘘で、スーパーナチュラル炸裂させない魂という地味な死後世界にノレるかどうかが分かれ目か。死者は肉体を失っても性格は不滅なだ、という。
ラブリーボーン」はキュートな怪作だ。オススメ!


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