○へたくそ、計算づく、無理矢理


「決定盤 十代目 金原亭馬生 落語集」より、「茶金」を聴く。
「茶金」は、道具目利きの茶屋金兵衛と粗忽な油売りのハナシ。上方落語でいう「はてなの茶碗」。

馬生はあまり巧い噺家ではない。おそらく馬生自身それを知っていただろう。
この「茶金」も何かガチャガチャしている。ハナシの咀嚼運転にムリがある。
なぜムリをするのか。
このハナシのガチャつきは、馬生が得意に落とし込むためのムリのせいだ。馬生のおかしさは、芸の幅の狭さと表裏一体だと思う。一本槍。それしかない。工藤公康にとってのカーブみたいなもの。伝家の宝刀だ。だから効果的に放らなけらばならない。
茶金さんの京都弁のカッタるさは、ホントにタルい。けどそれは下手クソのためではない。馬生計算づくのタルさなのだ。ウィニングショットのカーブを投げるまでの伏線という寸法だ。
つまり馬生のあの超然的なおかしみは、試行錯誤の上に辿り着いた芸の極みだった。十代目馬生のオリジナル。誰の真似でもない前人未到のそれだった。ま、真似したい芸風ではないかもしれんが。
「茶金」の特徴は、冒頭の清水寺脇の茶屋で茶を呑んでいる茶金の描写だろう。この描写は、目利き茶金の所作一々を、見ない風でちゃっかりおさえている二人の男の視点だ。ちょっと映画風演出か。馬生は、この冒頭から崩しに掛かっている。無理矢理だなぁ。


決定盤 十代目 金原亭馬生 落語集
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