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○奥様という理想、嫁という現実
「枝雀落語大全(8)」収録「青菜」を聴く。
噺は、仕事先の大家(たいけ)の主人と奥様の上品なやりとりに感動した植木屋が、嫁動員で「大家ごっこ」をやるというもの。元々上方の演目らしいが、ぼくは東京の桂文朝バージョンが好き。
枝雀版「青菜」は、大家の奥様と植木屋の嫁のギャップの強調するため、一層嫁キャラが作り込まれている。植木屋の嫁に対するボヤキは、今どきの吉本芸人に通ずるものがあって面白い。
気になったのは噺の枕部分。持論の緊張と緩和の法則をささっと開陳するテイ。
結論から言えば、まったくの杞憂だったけど、ふつう今から落語を一席というとき、こうした落語の構造分析的メタ視点を客に意識させるのは、禁じ手じゃないか。枝雀のあまりに無防備なその枕のきりだしに、ちょっとドキドキとした。
「青菜」の面白みは、現実的でしっかりもの風な嫁が何故だか夫の「大家ごっこ」に付き合ってしまうトコロが可笑しい。嫁も「奥様」への憧れをまるっきり捨てたわけじゃないのだ。
今ハマっている柳好もこの噺を演ってるようなので、是非聴いてみたいと思う。
枝雀落語大全(8) | |
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