○「分かりやすく伝える屋」の誕生 ー 池上彰池上彰「わかりやすく〈伝える〉技術」」
(講談社現代新書 ISBN:9784062880039)


池上さん、フリーになって間もない頃のエピソード。
民放の情報番組のコメンテーターのシゴトを請けたと。で、その番組で司会者からしきりに
「池上さんはどう思いますか?」
と意見を求められ、非常に困惑したという。
それは個人の政治的なスタンスや意見を公の電波で打ち出していいのかというタメライだった、と池上さんは振り返る。
このタメライは結構根が深く、「自分の意見は言わないように」というNHK方針でやってきたことが、結果的に「自分の意見」を持たない自分を形成したのだ、と池上さん、自己分析している。
このくだり、案外さらっと書いてるけど、察するに当時の池上さん、民放が求める「コメンテーター像」と自分のキャリアのギャップに相当ビビったんじゃないだろうか? 独立ホヤホヤ。野望って言わないまでも目算完全狂ったというかさ。
だから、「意見屋」でなく「解説屋」として「朝ズバっ」で接してくれたみのさんに救われた、と池上さんは言う。やっぱ、分かりやすい解説こそオレの生きる道なんだ!って、自分のキャリアを再認識したってことか。ま、独立した以上、腹くくるしかない!って心境だったろうね。イイ意味で居直ったというかね。
ま、そういうあんばいだから池上さんは、みのさんや久米さんのようなMCの位置をぜんぜん狙ってないんだね。オレむきじゃないと。総合司会から振られたときに、自分の持ち味を発揮すればイイというスタンス。
土田晃之のトンチの利いたコメント力を絶賛してんだけど、これもテレビ内での自分の役割もある意味「ひな壇芸人」だという池上流自己認識の成せるワザかもしれない。クールだなぁ。



わかりやすく〈伝える〉技術 (講談社現代新書)
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