○弟の器量 - DVD「千原トーク」分析


DVD「千原トーク」は、かれらのトークライブを収録したもの。近所ツタヤで1、2巻借りて観た。
娯楽としてでなく、トーク術の素材として観た。
ぼくは、客が笑うのを話芸の効果と考えた。つまり、客の笑い(結果)にはトーク術の手管(原因)があるはずと仮説を立てた。
この仮説立証素材にチョイスしたのが「千原トーク」1、2巻のわけだ(3巻もリリースされているが、いつも貸し出し中で借りれなかった)。
客席がどっと湧いてる箇所を探し、そこを基点に遡及的にトークを検証するという方法を採った。千原兄弟のオモシロバナシは、実質的に弟(通称ジュニア)が担っている。ゆえに今回の分析対象も弟に的を絞る形となった。
結果的に仮説立証の確信は得られなかった。が、お笑い分析的視点で千原弟(ジュニア)のトーク術を眺めることは、非常に有意義だった。ぼくは、弟(ジュニア)のトークの要諦は以下の3つと考えた。

1,日常に潜む理不尽
2,感情再生法としての語り
3,文脈の接続

千原弟(ジュニア)のトークのタネは、彼の日常に由来する。大抵がヒドい仕打ち、日常に潜む理不尽さの告発の体裁。いってみれば、ボヤキだ。つまるところ、千原トークはボヤき芸の今日的バリエーションと言えるだろう。
理不尽バナシで語られる災難はふつうに我々でもあり得る程度の日常的トラブルだ。しかし弟(ジュニア)の感情再生能力で迫真的に語られると、聞いてるも親身に聞いてやらなならんというあんばいになってくるから不思議だ。
「この間こんな目に遭った」的日常的災難をハナシ体裁は、実はオチにまで影響する。というかオチが、ボヤキ適度の効果うすであったりする。けれど最終的なオチの弱さは折り込み済みというか計算ずくに思えた。
緊張、それを解放する緩和(オチ)が笑いを生むという桂枝雀提唱の「緊張と緩和」の法則。千原弟(ジュニア)の災難バナシは、この法則を意識的に踏襲している、とぼくは思う。
だからというか、逆説的にというか、千原トークの理不尽バナシのオモシロさは、実はオチでない。その理不尽さを語る過程にある。ここで「文脈の接続」の登場だ。

タクシーを拾おって思ってら、空車のタクシーが。。。片側三車線の、歩道から、歩道から一番遠い方ばかり走って来るんデス。何で!?
漫才師が二人いて、センターにマイクがこう立ってます。漫才師が(センターかから離れて行き)このへんで喋ってるみたいなもんじゃないですか?

上は、千原弟(ジュニア)の理不尽バナシよりの抜粋(大意)。ま、「見立て」と言っても良いのかもしれないが、千原弟(ジュニア)の技巧の場合、文脈の接続のほうがシックリくる。
まぁ、そうは言ってもすべて分析できるもんでもない。2巻収録のアメリカ人ジョーのハナシは面白いが、なぜ面白く感じるのか、分析不可能さっぱり分からない。

昨日は往来座外市で、桂枝雀「らくご DE 枝雀」購入。落語のオチを、「どんでん」、「謎解き 」、「へん」、「合わせ」の四つに分類した手際はもはや学者の域。感想はまた後日。


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アマゾン、ちくま版「らくご DE 枝雀」検索ヒットせず。7じゃあるのにねぇ。
http://www.7andy.jp/books/detail/-/accd/18898584