○妖怪も濡れる街角


小松和彦「日本妖怪異聞録」。「酒呑童子」、「妖狐  玉藻前」、「是害坊天狗」の三章をまで読む。
妖怪は何故退治されなくてはならないのか?
ま、悪さするから退治されるのだが、小松が紹介する伝承や説話を読んでも、連中の悪事の背景、動機はよく分からない。たぶん妖怪は生まれながらにして「悪の権化」なのだ。
生まれながらの悪党。。。何だか切ないな。つまるところ妖怪とは、退治する側の正統性を喧伝するための引き立て役だ。酒呑と妖狐の場合は陰陽師が退治仕事の肝いりで、是害坊天狗は天台宗の坊主にコテンパンにやられる。
酒呑童子や妖狐は噛み付いたり、美女に化けて天皇の誑かしたりとそれなりの見せ場あっておもしろい。けど是害坊のハナシは、天台の奥ゆかさもない法力自慢に天狗が駆り出された感じで興ざめだ。天狗風情と完全ザコと見下した調子が鼻につく。笑いバナシとして品がない。
とにもかくにも妖怪は退治される側の都合の産物だ。連中には、ある種ウルトラの怪獣に相通ずる哀愁と色気がある。たいていの日本妖怪はちょっと濡れてるっぽいが、それがチャームポイントのように思う。


日本妖怪異聞録 (講談社学術文庫)
日本妖怪異聞録 (講談社学術文庫)小松 和彦

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