菊地成孔大谷能生東京大学アルバート・アイラー 東大ジャズ講義録・歴史編」読み中です
(文春文庫 ISBN:9784167753535


菊地成孔大谷能生東京大学アルバート・アイラー 東大ジャズ講義録・歴史編」読み中。
本書は菊地・大谷コンビの東大ジャズ講義をベースに大谷が、菊地の口調で書いたもので、まんまの「講義録」ではない。
十二平均律→バークリー・メソッド→MIDI
本書は記述・再生という観点から、譜面をウラ支えする楽理を見据える音楽産業史というあんばい。
オチがMIDIであることから分かるように、音楽の抽象化がテーマの基調になっている。音楽の抽象化ってのは、楽器を弾かなくても作曲できちゃうということ。
MIDIとは、ヤマハ肝いりの音楽データについてのルールを指す。このルールというか規格がオッサンにとってのパソコンがMSワードだという以上に世界標準なっている。つまり、音楽製作にあたってMIDIを無視することはお尻でリコーダーを吹くより困難なわけだ。
ギターやピアノ、トランペットといった楽器演奏にはテク(技術)が必要だが、MIDIはコンピュータが演奏してくれるから、演奏テクは全くいらない。つまり千手観音も真っ青な超絶技巧のピアノ曲を作っても「OK」という結果になった。人間業じゃ脚が吊りまくりの高速ドラムのバスドラ打ちも「アリ」になった。もはやお尻で「キラキラ星」を吹いたくらいで総立ち拍手はうけられないのだ。
つまりMIDIの台頭は、馬鹿テク故にサムライ級にリスペクトされたジャズプレイヤーに引導を渡した。
いやーおもろい!歴史語りって、知らない過去が知ってる今につながるからオモシロイんだ、と実感。司馬遼太郎は歴史語り中に人物エピソードを挟み過ぎて脇道それまくりでゲンナリだけど、この本はそうならないように自制している感がイイ。
我々には語るべき歴史がある!
という強い意志が伝わってくるよ。週刊誌・新聞連載のオシャベリ人物伝では得られない疾走感、さいこー。
あと、あんまかんけいないけど、絶対音階ってゆーのは、天然でなくて人間のピアノ化、十二音平均律の内面化なのかもね。いまどきの人間リズムボックスのハシリってゆーか。
つーわけで、昨日本屋さんで大谷さんの新刊「持ってゆく歌、置いてゆく歌―不良たちの文学と音楽」(エスクァイアマガジンジャパン ISBN:9784901976671)も衝動的に買いました。


東京大学のアルバート・アイラー―東大ジャズ講義録・歴史編 (文春文庫)
東京大学のアルバート・アイラー―東大ジャズ講義録・歴史編 (文春文庫)菊地 成孔

文藝春秋 2009-03-10
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