○「文藝別冊 特集 吉田戦車」を買う
(河出書房新社 ISBN:9784309977188) 


マンガ家・吉田戦車にフォーカスしたムックがでた。吉田が徹頭徹尾自分自身を語り倒すのではなく、吉田の周辺人が吉田作品やそのひととなりを語ったもの中心の企画。
西原理恵子、二ノ宮和子、寺田克也中川いさみ等などの同業者連中が各々の吉田観をエッセー風に綴ったマンガが目を惹くが、出来は総じて良くない。なかでも吉田と再婚した伊藤理佐のが気に食わない。日常生活における吉田のズレにツッコミをいれるものなのだが、これが「わたしたち、案外幸せなんです。うふふっ」ってかんじのノロケ全開でげんなりさせる。オマエなんかエビに蹴られて火星まで飛んでってしまえ、と気がついたら念じていた。
ま、伊藤理佐だけでなく女性陣は壊滅的にダメ。かわうそくんに代表される吉田マンガのキャラの風情と吉田当人を比較してみる式のものだらけになっている。要するに吉田戦車というお題に対する料理のしかたカブリ過ぎ。これは編集の責任でもあるだろう。事前にヒヤリングし、細かなお題を個別に指定するか、マンガ家比率を低くするかすべきだった。
エッセーマンガとは別に文字でつづったエッセーもある。まず本上まなみは論外。石田千のは彼女が提唱する東北三大芸術家(棟方志功ナンシー関吉田戦車)に俺がノレない。
というなかで、吉田本の装丁を手がける祖父江慎のがおもしろい。
祖父江は、自分が自信満々の装丁案は吉田戦車のダメだしを食らうと書いている。祖父江はそれについて自分なりの見解があるようだが、たぶんその見解は間違っている。
問題は、自信満々の祖父江なのだ。
自信満々なときの彼は、絶対地に足がついてないはずだ。吉田でなくても、「突き返せ!」と虫が知らせるだろう。
三万字インタビューは、「たのもしき日本語」の相方だった川崎ぶらを聞き手にしたもの。テレビアニメの主題歌や流行歌で吉田の半生を振り返ってみるというテイ。これはこれで面白い。
あと、朝倉世界一との対談があるんだけど、朝倉世界一、思っていた通りの顔だった。


吉田戦車 (文藝別冊 KAWADE夢ムック)
吉田戦車 (文藝別冊 KAWADE夢ムック)
河出書房新社 2009-02
売り上げランキング : 594

Amazonで詳しく見る
by G-Tools

関連商品
フロマンガ 3 (3) (ビッグコミックススペシャル)
スポーツポン 2 (2) (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)
スカートさん (ビームコミックス文庫)
吉田戦車の漫かき道 (BEAM COMIX)
エハイク紀行