○図書館本  酒井順子「女子と鉄道」読了
(光文社 ISBN:9784334975098


役に立たないムダ知識を体系的に語れる知性。
それこそがオタクの本性だと思う。ムダをムダと知りつつ、拾いあげを慈しむオタクたち。ぼくにはそんな彼らに人生半分卒業したような中国の賢人がダブってみえる。
かの地では国家が腐敗し乱世到来のとき、在野のインテリたちは英雄のもとに集結、新時代を切り拓くのが常だ。だからオタクも潜在的尊いのだという気がする。時流を読まず付和雷同を嫌うが故に不遇。だから尊いし、カッコイイ。それがぼくのオタク観だ。
酒井順子「女子と鉄道」を読んだ。鉄道旅はその道程こそが醍醐味だと謳うエッセイ集。酒井当人にとってはテツ告白の書でもある。けれど、なんか違う。彼女からぜんぜんテツっ気が感じられない。
っていうか、酒井はぼくのオタクのカテゴリーから大きくはみ出ている。
前月の時刻表を平気でつかう。スイッチバックの原理が理解できないままでいる。宮崎の高千穂鉄道(もはや廃線)最大のハイライトである鉄橋通過を寝過ごす(というか、車内でほぼずっと寝ているらしい)。。。。コレはもはやテツとは言えないのではないか。ご自分では「乗り専」と言っているが、寝るんじゃ乗る意味がわからない。酒井さん、あんたにとって鉄道に乗るってどういうこと?20ページより引用。

男性のように、「制覇」とか「収集」といったことを目的とするのではなく、単に鉄道の揺れに身を任せる肉体的快感や、「きれいだなぁ」とか「なにもすることなくて嬉しい」といった感覚を求めるだけ、乗っているのでした。

なるほど。パソコンやケータイ隆盛のご時世に、敢えて万年筆という自己演出か。雑誌サライ読んでるオッサンみたいだな。ラグジュアリーな空間としての鉄道旅ね。お一人サマ発想だね。そうか、やっぱ男子はやっぱメカとしての電車そのものに惹かれるんだな。そんでもって、それを制御する全体のシステムへと興味がつながっていくわけだ。
仕事を持ち、それなりに甲斐性あるの女の「道楽としてのテツ旅」。ゆられて寝るもこれまた一興か。ま、贅沢といえば贅沢かも。
負け犬って流行語大賞だったけ?読んでないけどあの本は売れたね。アレって結婚しないって腹をくくったっことだよね。ピンとこなかったけど、それって女競争降りたってことだったんだね。その点じゃ負け犬も在野にあるんだな。
ぼくは小学校のころ鉄棒の逆上がりが出来きないヘタレだった。中学で剣道部入部、けっこう熱中した。帰宅後も竹刀の素振りとかやった。そんなある日校庭の鉄棒でふざけて逆上がりとかやったら、呆気なく出来た。いつの間にか腕力がついていた。「車窓から雪がみたいから、奥羽本線乗る」を可能にする経済力はそれと似ているように思う。
そういえば、近日酒井の新刊「儒教と女子」が出るのだそうだ(参照)。
儒教教養ドップリでなかったコトが近代日本の素地になった的司馬遼言説が跋扈して久しい。この体たらくに頭突きをかます本だったらいいな。。。と思ったけど、やっぱ違うだろうね。けど期待大。


女子と鉄道
女子と鉄道酒井 順子

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