○戦車とバブル


週刊文春を買う。ぼく大リスペクトマンガ家、吉田戦車の「新・家の履歴書」が面白い。吉田がマンガ家として大成したのが80年代だったこともあり、バブルにウカれたマンガ家の証言として興味深い。
ぼくが「戦え!軍人くん」のためにスコラを買ったのは'88年ごろ。岡崎京子が雑誌「宝島」でイチオシのマンガ家として吉田戦車を挙げていたからだ。当時のぼくは、正直コレが岡崎京子の眼鏡にかなったマンガなのかと首をひねったものだ。
'89年「伝染んです。」で大ブレーク。岡崎の眼力は正しかった。ブームとは恐ろしもので、ぼくの周囲のさほどマンガに詳しくない連中も「フジョーリだよな」とあははと笑っていた。テレビCMでカワウソ君が起用されもした。船橋西武だったか、吉田戦車展というイベントもあった。
相原コージの「コージ苑」の後釜としてスタートした「伝染んです。」。イケイケドンドンな時代の空気が可能にいた抜擢であり、それがバカあたりする奇跡的な時代だった。ヘソまがりなぼくは、「世間がちやほやされる不条理マンガ」なんて不条理ではない!とか能書きを垂れていた。けど、「伝染んです」のベラボウな面白さは脱帽だった。
吉田、26歳で雑誌編集者の女性と結婚。翌年には、累計で100万部を突破した「伝染するんです。」で文藝春秋漫画賞受賞する。
その当時の破格の出世ぶりを吉田は淡々と語る。「新・家の履歴書」より引用。

結婚と大ヒットで生活は一変しました。まず、渋谷区初台に家賃四十万円の、3LDKのマンションを借ります。銀行が擦り寄ってきて節税対策だ、投資だとうるさいし、妻も乗り気だったので、山梨に別荘、都内でワンルームマンションを買ったりしました。

投げる不動産屋
当時週刊誌上での桑田真澄のキャッチフレーズ。二十歳そこそこの若者の引退後の蓄えへの異常な熱心さが滑稽だった。実際ぼくは桑田を好きでなかった。帽子のツバが斜になる桑田の投げ終わりの姿、その自分に酔っている風なとこが馬鹿っぽくて格好わるく思っていた。
吉田が、まさかそんな桑田とおなじ「不動産屋」だったとは!!

キャンプが好きで国産4WD車を重宝していたくせに、ベンツに乗り換えたのもこの頃です。

うぎゃー!戦車がベンツって!
とろころが、やっぱそんな生活は長くつづかなった。バブルがはじけたこともあったろうが、吉田自身、そういうハイソな生活になじまなかったみたい。ま、そういう意味で今だからこそ書けるハナシってかんじ。


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「新・家の履歴書」より。

かっこよくいえば、バブリーな東京に背を向けていた(笑)。ただし、そこには劣等感やプレッシャー、見栄なども見え隠れします。当時の僕の心境は、後の作品『ぷりぷり県』に投影されます。異常に郷土愛が強く、東京に対抗心を燃やす主人公は、ある意味当時の僕でもありました。

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