○「編集者 国木田独歩の時代」映画化激希望


黒岩比佐子「編集者 国木田独歩の時代」は、意外と知られてない国木田独歩の編集者、ジャーナリストとしての一面にスポットを当てつつ、彼の人生を顧みるというココロミ。博品館などの当時一流の版元の向こうをはり、アイディア勝負で雑誌をつくっていく独歩とその仲間たち姿が清々しい。本人たちもさぞ愉快だったに違いない。けれど事業的には大失敗で破産した。
テレビの「いつみても波瀾万丈」の独歩の回を読むような「編集者 国木田独歩〜」だが、福留功男の傲慢づらを見なくてすむのからイイ。
マッチ箱事件は印象的なハナシ。それは1907年9月に起きた。その頃の独歩社は経営がいよいよ切羽詰り、独歩は社員たちと今後の善後策ついて三日間話し合いをした。
その最終日独歩は、仲間数人と連れ立って大いに酒をのんだ。その飲みに最後まで付き合ったのが小杉未醒田山花袋。独歩は彼らを家に泊まるよう誘った。家で飲みなおそうというのだろう。独歩の心中を察したか、ふたりは泊まることを承知した。
以下「編集者 国木田独歩の時代」、257〜258ページより引用。

  酒が入った三人は上機嫌で戻ってきた。独歩と未醒は先に二階へ向かい、花袋はひと足後れて、新体詩か何かを口ずさみながらあがってきた。そのとき、盆の上の小皿に置いてあった黒い長方形のものが花袋の目に入った。腹が減っていた花袋はそれを羊羹だと思い込んで、よくたしかめもぜず、手にしたとたんにかじりついた。ところが、その長方形の正体はマッチ箱だった。近眼の花袋は、マッチ箱を好物の羊羹に見間違えたのである。
未醒はそのときのことを、「田山君が羊羹と間違えて、いきなり、マッチを食ったので其の勢いの烈しかったこと、ガリッと音がした位であった。悲惨極まる処に一場の滑稽劇が演じられた次第である」と『趣味』1908年八月号に書いてある。

近眼で好物が羊羹、そそっかしいという花袋のキャラ立ちぶりがすごい。都々逸とかでなく新体詩を口ずさむってのは、当時しちゃイケてる感じだったんだろうけど、そんなカッコつけてもマッチ箱ガリッと齧ったちゃ台無しだ。
田山花袋役を杉作J太郎で「編集者 国木田独歩の時代」映画化できないか。未醒はリリーフランキー、独歩、みうらじゅん!っていうのはどお?井筒さん。


編集者国木田独歩の時代 (角川選書 417)
編集者国木田独歩の時代 (角川選書 417)黒岩 比佐子

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