yasulog2008-03-28

○野菜ファンの雄叫び、「芝生の復讐」の岸本佐知子の解説


図書館で借りたのに積ん読のままだった、瀬戸山玄「野菜の時代」を読む。世田谷等々力で有機農業に取りくむ、大平農園を取材したノンフィクションもの。有機農法というと反体制なヒッピー的な主義や思想がバックボーンにありそうだと思ってしまうが、大平農園はさにあらず。むしろハウス栽培や農薬、科学肥料をつかったアメリカ式農業に邁進する篤農家だった。これはイイと思ったことは、先代はどんどん採用する人だった。
しかし、先代の体は農薬に蝕ばまれ、ガンで他界する。婿養子の博四さんも白内障で目を悪くした。博四さんは、これをきっかけに農薬、化学肥料依存の農法からの脱却を模索した。つまり、先代のハウス栽培や化学肥料投入がそうであったように、博四の有機農業も大平農園という先進スピリッツのたまもの、試行錯誤の過程なのだ。
頭でっかちな思想や信条などのゴタクじゃ畑に実はならない。日々の畑で、ファーブル張りの観察眼で虫や作物のちょっとした兆しを感じとり、これに当意即妙に対応する博四さん、そこに至るまで幾多失敗があったことか。有機農業は勇気農業だ!おもわず駄洒落のひとつも言わずにはおれない。
勇気。否、もしかしたらバカなのかも。先代の化学肥料や農薬万歳農業から真逆の有機農業に振れた幅も、博四さんの虫の天敵関係を活かす半熟堆肥の考案も独特なふっきれた感があり、なんか面白い。面白いことはお笑い芸人だけの専売特許ではない。また爆笑だけがおもしろいことでもない。笑いにならない面白いこともあるはずだ。そういう意味で大平農園は断然面白い。
大平博四、彼に引き継がれ培われてきた大平農園魂と知恵はまだまだ発展途上にある。


新潮文庫の新刊、2点購入。

リチャード・ブローティガン「芝生の復讐」(ISBN:9784794922298)
・四方田犬彦「ハイスクール1968」(ISBN:9784101343716)

「芝生の復讐」、岸本佐知子の解説がいい。ブローティガン作品の翻訳をいくつも手がけ、「芝生〜」の訳者である藤田和子の卓抜した翻訳術にビビれ、おどろけ!とラッパ、半鐘を鳴らす賑やかなもの。私が藤本なら、岸本解説の最後の一文で大泣きする。
四方田犬彦本、本当に読むのか?お前。本を買うとき、毎回そう自問しているが、今回は全くのジャケ買い。モンキーパンチのカバー装画にシビレた。


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