○「暮らしの手帖」編集長に松浦弥太郎氏就任とのこと
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書店の返品は取次ダンボールにつめて送り返すのだが、書店員時代、返品をものすごく端正な返品を作る男がいた。
俺は、男のこさえた端整な返品を密かに、「テクノ」と呼んでいた。
90年代以降のテクノの音の硬質な感じと、彼のこしらえた返品のものの見事な立方体さかげんに相通じるものを感じ取ったからだったと思う。たぶん。
引越しとかで本をダンボールに詰めた経験のある方なら分かるかもしれないが、本というのは、厚みがばらばらで版型もCDやヴィデオテープとことなり、かなりのヴァリエーションがあるため、それを箱のなかで動かないようにキッチリ詰める作業は実はかなりの骨折りだ。
くだんの男は、それを飄々とやってのけていた。しかも、ダンボールの立方体のフォルムがまったく崩れないように、である。

たしか、男はどこぞのインテリア関係の会社に就職するとかでバイトを引退していった。弥太郎さんの古本屋cowbooksが大好きだった。新人バイトに「暮らしの手帖」の商品テストの徹底ぶりをとくとくと語る男だった。頭の回転が速く、センスの良い男だった。
センスのよい人は、ときに現状に対し呪いの言葉で痛打したりするものだが、男にはそういった変な頑迷さはなかった。むしろフレキシヴに現状に対応することを彼は愛していたように見えた。
弥太郎さんが「暮らしの手帖」の編集長になる。あのテクノなくらいに端整な返品をつくった男がこのニュースを知ったらさぞ喜ぶだろう。