板橋作美「占いの謎」、感想その2
(文春新書 ISBN:4166601420

筆者によれば、同じ現象を目のあたりにしても観察者が属する体系に応じて見い出される意味は変わる。
裏返しに着地した下駄に「明日雨」のしるしを読み取るのは、我々がそうした俗信を社会慣習レベルで受け入れているからで、ひっくり返った下駄自体が意味を宿しているのではない。
つまり、世界は秩序立ててあるわけでなく、言語、法、宗教や科学などの知識体系が世界を秩序立てるわけだ。
占いもこうした世界を把握のための体系のひとつにあたる。そうでありながら、占いや俗信が胡散臭く映るのは、現代人が依拠する知識体系が西洋伝来のそれに偏重しているためだろう。逆にいえば占いは、近代の恩恵、西洋知識体系から外れているがゆえに胡散臭いわけだ。
多少無理矢理にまとめるなら、占いは近代的知識体系に対するカウンターメソッドのひとつと言えると思う。
胡散臭さは占いの魅力のキモなのかもしれない。