江國香織「泣く大人」
(角川文庫 ISBN:4043480040
kokada_jnetさんより頂いたコメント
http://d.hatena.ne.jp/yasulog/20050313#c
江國香織の文体が片岡義男しているという指摘が気になったので、エッセー集「泣く大人」を読んでみた。
単刀直入に言って「似てない」。いや私も本屋で立ち読みしたときには「似てる」と思ったのだけど、やっぱり「似てなかった」。ま、義男大好き人間の私の主観が色眼鏡になっている可能性はおおいにあるけれど。
「泣く大人」には、頻繁に父親のことが出でくる。そのから、生前の江國滋が娘に注いだ愛情のようなものが読み取れる。滋の愛情のようなものとは、彼女がいま現在彼女であることは彼女の意志もあるが、父親の経済的な、あるいは人脈的な娘支援に負うところが大だったということ。
江國香織が父親について語るその語り口は、滋から継いだ有形無形の財産への感謝の気分が目一杯込められている。
翻って、片岡義男は一体何を彼の父親から引き継いだだだろうかと考えた。
義男にも”引き継ぐべき財産”があったはずだが、彼はそれに対して無頓着であったのではないかと思った。もっと言うと、義男にはそれが「見えなかった」と推察する。別の言い方をすれば、それが見えない子供が仕方なしに「片岡義男」になったというのが、義男の有様なのだろうと思う。
片岡義男文体とは、彼が彼自身以外の何者でもないという孤高の境地とも呼べるかもしれない。


泣く大人
江國 香織

角川書店 2004-08
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