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○「やさしい死神」
(東京創元社 ISBN:4488012043)
ちょっと前の週刊文春で田中啓文が真面目に褒めていたので、読んでみた。
「季刊落語」の編集部は総員2名、編集長の牧大路に間宮緑。このコンビが探偵と助手役。
血なまぐさい事件はおきない。いわゆる「日常の謎派」に属する短編連作だが、些細な出来事の裏に潜む悪意を突きつけられような後味の悪さを感じることはない。むしろ、猫の体温程度のハートウォーミングさがある。
職業探偵でない探偵は、己の本業の知識を援用し難事件の推理にあたり、往々にして蘊蓄を開陳する傾向がある。本書における探偵役の牧も落語教養を活用するが、蘊蓄兆候は薄い。ゆえに牧は正体不明のとらえどころのない印象を与える。
探偵の素っ気なさと事件の背後立ち現れる人情とのバランスこそ本書の真骨頂。
個人的には、牧はナンダロウアヤシゲさん(id:kawasusu)をイメージした。お会いしたことないけども。
坂木浩子のカバーイラストもナイス。
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