○「ダウントン・アビー」シーズン2に夢中。


1910年代の英国の片田舎、時代の波に翻弄される貴族一家、その屋敷を背景に、近代国家に生まれ変わろうとする英国を描こうというのがこのドラマの趣旨だと思う。けどそんな能書きなどなくても普通に楽しめる娯楽作だ。ネットで英国貴族版「渡オニ」と評しているのを見かけたが、たしかにその趣がなくもない。個人的には英国版「細雪」って感じをうけた。
このドラマのヒロインはクローリー家三姉妹の長女メアリー。クローリー家は貴族の家柄。「グランサム伯爵」という爵位ダウントン・アビーという屋敷を持っている。当代はヒロインの父親ロバート。彼には息子がいない。なので、次期継承者の親戚のパトリックになっていた。
ところがパトリックは不慮の事故で死ぬ。すると次期爵位継承者は地位はパトリックから彼の遠縁マシューに移った。マシューは貴族の家系ではない。けど弁護士で小金持ち(ブルジョア)。気取らない、感じのいい人。
メアリーの両親はメアリーをパトリックと結婚させてる予定だった。が、パトリックが死んだため、計画が頓挫した。このため、両親は娘のマシューとの結婚をかすかに期待する。憂慮すべきはメアリーのプライド。
メアリー、実際マシューと会って話しみて意外にも惹かれた。でもメアリーにはマシューに言えないアヤマチがあった。その秘密が彼女をマシューに自分の気持ちを打ち明けるのを勇気にブレーキをかけた。
ツレないメアリーにマシューも脈無しとみて退散する。そんな折、英国がドイツに宣戦布告。第一大戦!!マシューも戦地に。
というのが、シーズン1の流れ。

これから観ようと思う方々へアドバイス。まずクローリー家三姉妹のメアリー、イーディス、シビルの顔をおさえるべし。クローリー家というお屋敷が身分社会の英国のメタファーになっているし、ドラマで描かれる主人公メアリーの苦悩や試練は、世界が様変わりする瞬間にあるための避けられない旧体制の軋みになぞらえている。世界は牧歌的な王国の寄り合いから、弱肉強食な近代国家の集合体に激変していくのだ。
メアリー、彼女は自分が女であるばかりに爵位を継ぐことも出来ず、継承者に嫁ぐしかこの家に残れない境遇に幻滅している。彼女の複雑さは貴族社会の旧弊さを呪いつつも、ブルジョアの台頭にも諸手を挙げての歓迎とはいかない自負心だ。気高さと不器用さ、メアリーに内在する二つの要素が役を演じるミシェル・ドッカリーさんの美貌以上に美しくみせている。
ドラマの結末はメアリーの幸不幸と無関係ではないはず。というか、貴族の女の新たな時代における生き方と提示するものとして決着するだろう。が、そんな深読みなんてせずとも全然へっちゃら。彼女とマシューとの恋がはたして成就するのかどうか、それをハラハラしながら観るのも一興!っていうか、そんなメロドラマ要素にきゅんきゅんしてる自分に自分が一番驚いている。メアリーっ、You、はやく好きだって言っちゃうなさいよッ!!(ヤキモキ)


NHKのホームページにダウントン・アビーの登場人物相関図があった。
プリントアウトすれば、ドラマ観賞のお供に便利かも。
http://www9.nhk.or.jp/kaigai/downton/chara/print.html