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○様式のパッチワーク ー 山形孝夫「聖書の起源」(ちくま学芸文庫)雑感
◇山形孝夫「聖書の起源」を読むきっかけは、映画「冬の小鳥」をみたことだった(以前書いた感想はこちら)。父親とジニの関係をイエスと父なる神のそれになぞらえて語る巧みさに圧倒された。と同時に自分のキリスト教的教養のなさを痛感した。
で、本屋でキリスト教がわかる系の新書やらの類いを色々物色した。山形孝夫「聖書の起源」はそうした暗中模索読書のなかで掴んだ手がかりだった。旧約および新約、聖典たるそれぞれには書いた記者の立場や意図が映っているはずだという松本清張的な着想とそれを慎重に読み解く手さばきに感動。アクロバティックな派手さはないが、沸々した熱が行間から立ち上ってくる。
本書「聖書の起源」が探る起源は、古代文学的地平なもの指す。そして文学観点からすると、空前絶後のベストセラー聖書も先行するオリエント神話の痕跡から自由でない。つまりテンプレの遣い回しがあるいうハナシ。
けど、テンプレ流用が悪いと著者は云ってるわけでなく結局人間がこしらえたんだよねということ。パクりとパクりでない箇所、あるいはいくつものテンプレ切り貼り的なパクりの重層化。古代文学的要素を聖書から見ることで、預言やら奇跡的行為、あるいは場面描写を、つまり逆に後々付け足された部分に、その当時の宗派的立場や社会的ニーズが見えてくる。
著者はそういた聖書の足された部分を誰が、いつ、どういう目的でそうしたのかを吟味していく。とりわけ、原始キリスト教誕生を探る手つきは思わず手に汗握る圧巻のクライマックス。まさにネ申!キリストの復活も病気治癒譚もキリストの十八番でなかったのだ。
おそらく今日キリスト教文化圏に暮らす人々の多くも、信仰は日本の盆正月のように行事的に世俗化し、信仰を下支えする聖書的エピソードがデータベース的に共有されているのではないか。
実は「聖書の起源」における著者の説がどれほど支持されているかは分からない。けどこの際どうでもイイと思う。なんせ聖書すらテンプレの継ぎ接ぎなのだから。
そんなことより、「冬の小鳥」のような西洋教養要求作品やキリスト教が分かる系本にたいする選球眼は端的にあがった。それがうれしい。
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コレも昨日買った。なるほど分かりやすいが、アンチョコっぽい。俺的には「聖書の起源」副読本。