○キング・オブ暴君の誕生 ー 三池崇史監督「十三人の刺客」感想


明石藩主である松平斉韶(まつだいらなりつぐ)は、極悪非道のバカ殿。がしかし、将軍の腹違いの弟とのことでおぼえめでたく、近々にも幕閣起用が約束されている。
極悪斉韶が幕府中枢入り込むことを憂慮した老中・土井大炊頭利位(どいおおいのかみとしつら)は、島田新左衛門に白羽の矢をたて、極秘の任務を告げる。
島田の拝命した任務とは、参勤交代で国元へ帰る道中の斉韶暗殺だった!!
島田新左衛門ら刺客側、極悪非道暴君の斉韶。いずれも「時代遅れの侍」という意味で同じ穴のムジナだ。両者は徳川の作り上げた太平の世に倦み、暴力を渇望している。
徳川が代々築き上げた幕藩体制というシステムは、天下太平と引き換えに死に場所を失った侍を大量に産み落とした。
老中から命をうけ、暴力解禁に武者震いする島田。対する斉韶にしても、その悪行三昧は溌剌たる「生」を生きられない太平の世の中に対する挑発としてあるのだ。
島田の刺客側と斉韶の明石藩。連中は「侍」履歴書に武勇伝を書き込みたくてうずうずしている。で、討ち死こそが侍キャリアでもっともハクのつく武勇伝なのだ。
斉韶の自身の命を狙う刺客に遭遇してはじめて「生」を実感するバカバカしさは、実は刺客、明石藩の両陣が抱える根源的な死に場所を探す侍の悲哀だ。
島田と対峙するラスト。稲垣の演技は「死を怖がる」か「死をおもいつつ「生」にワクワクする」か、どっち付かずのフガフガに見えた。けど、このフガフガこそが肩書き「侍」に不可分な死への向き合い方かもしれない。
兎に角、斉韶役の稲垣吾郎は素晴らしい。役所広司山田孝之松方弘樹も伊原も古田新太も夫々の魅せ場で味を炸裂させてるんだけど、この映画はゴローちゃん!彼がエンジンでぎゅるんぎゅるん映画を引っ張ってる。
SMAP各自は、孫悟空古代進や沈没やらと俳優業にも邁進しているけど、連中が貧乏くじを引きまくってる間に稲垣は易々とダントツに俳優キャリアを打ち立てしまった(どうするんだぁキムタク?)。
ま、サイコロは転がしてみないと分かんないってことだね。つか、ちゃんと試写とかチェックしてる?って思っちゃう。けど、まぁそりゃするよね、稲垣も一応メンバーだし。。。ってやっぱ、ジャニーズってすげぇーだなぁてつくづく思う。
ま、そんなこんなで最後にコレだけはボクが請け合うよ。
稲垣「斉韶」は、ニッポン映画史上最高で最悪な「キング・オブ・暴君」として日本チャンバラ映画史上に永遠に君臨しる!!(きりッ)。



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そういえば、浅野忠信演じる垣原って、極悪非道の斉韶と通底するな。



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