ナウシカなう! 海洋蟲愛づる姫降臨っー  倉谷うらら「フジツボ―魅惑の足まねき」感想


フジツボは海の生き物。
石の上にも三年がモットーで磯部や港、船の横っ腹にセメントのようにくっついているデコボコの軍団たちだ。このセメント軍団、よくよく見ると、おのおのが円錐形の先っぽのない富士山形でビッシリだから、ちょっとキモチわるくもある。
実はフジツボ、貝の仲間っぽいが、エビ、カニなどと同じ甲殻類なのだそうだ。つまり、あの磯部でビッシリ並ぶ小さな富士山のなかにエビみたいなヤツが隠れているのだ。そいつがフジツボの正体なのだ。
著者の倉谷さんは、ネット界隈で「フジツボ美人」と名高い海洋生物研究家。大学や研究機関の所属はないようだ。たぶん彼女のフジツボ愛はもはや既存の研究機関におさまりきれないのかもしれない。
本書フジツボ―魅惑の足まねき」は、学生、ビギナー向けの読み物。岩波科学ライブラリーという硬そうなレーベルから出ているが、さながらフジツボファンブックの体裁。そのあふれんばかりのフジツボ豆知識抜粋し箇条書きで紹介すると、

フジツボ幼生の足あとを観察して楽しむ「足あとの会」フットプリント・アソシエーションという国際的組織がある。
・亀の甲羅やクジラに付着する種類のフジツボがいる。
・またクジラはフジツボが付着しているのを知っているようで、仲間同士で闘うとき、フジツボ付着側で体当たりを食らわす。
ダーウィンフジツボきっかけで「種の起源」を着想した。
ダーウィンにはフジツボ研究に没頭した8年間があり、ダーウィン次男・ジョージは隣のうちで、「君んちのお父さんはどの部屋でフジツボするの?」と聞いた。

等など、本書を読めば、学校や職場で一番のフジツボ通、フジツボ博士になれること請け合い。
また、フジツボ、築地でキロ300円する高級食材で食感はホタテの、風味はエビとカニみそを混ぜた感じという。一方南米チリでは、デカいフジツボが採れ、庶民の食材という。「ソバ・デ・ピコロコ」というフジツボのスープ、食べてみたい。
なお、この感想を書くうえで倉谷さんのお顔写真をググって、しょこたんブログで発見。得体のしれない可愛らしさ。吉田戦車の「チクチクウニウニ」にウニ寄りなヒトの女性キャラで登場しそっ!
http://ameblo.jp/nakagawa-shoko/entry-10461360046.html


フジツボ―魅惑の足まねき (岩波科学ライブラリー)
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