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○意思を見つめる
アーサーCクラーク短編集「90億の神の御名」収録の「星」を読む。
「星」は宇宙大航海が可能になった未来のハナシ。「わたし」はイエズス会所属の天体物理学者。地球から三千光年の離れた宇宙船で、帰途にある。
宇宙の摂理。それは神のみわざ、恩寵というのが彼の信仰の有り様。つまり、「わたし」にとって天体物理学とは、その存在を体感しうる営み、神事であった。
職場のSF読みのひとは司馬遼太郎仕込みの宗教嫌いで、この「星」も、キリスト教に対する痛烈な皮肉と捉えているようだ。
たしかにそう読むのが素直な気もするが、このハナシ、この宇宙成り立ちの秘密にうち震える理性、その芽生えを照れながら謳っているようにぼくは感じた。