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○2009年 読書の収穫
◇総評
巷の話題を寡占した村上春樹も勝間和代も読まなかった。去年いちねんの我が読書道程を振り返ってみると、マイウェイぶりに半ば呆れる。
そのマイウェイさには一つの傾斜があって、野球本を多くよんだ。「キャッチャーという人生」を筆頭に野球関連書がランキングしたのも、そうしたマイブームの反映だと思う。
また、「傭兵の二千年史」の著者・菊池良生の歴史語りはアタリだった。この場をかりて、読書神に感謝したい。
そして、主よ。今年も面白い野球本や新たなジャンルの逸材的書き手に出会えますよーに!イーシャラー。
1・赤坂英一「キャッチャーという人生」
今までキャッチャーに力点をおいて野球を観ることがなかったため、ものすごく目からウロコ落ちた本だった。谷繁が権藤時代のベイを振り返り、「ベースボールしてる」と感じたいうコメントは、キャッチャー極意を推理する上でデカいヒントになった。
以前書いた感想はこの辺り。
2・菊地成孔・大谷能生「アフロ・ディズニー」
松山ケンイチのカメレオン俳優ぶりが、どうも好きになれんなぁという人は、ぜひご一読を!
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3・ウラジーミル・ナボコフ「透明な対象」
語り手の正体は別に東野圭吾でも思いつきそうなチープなネタ。けど、そんなチープなネタも
ナボコフの手に掛かれば、幽霊も裸足で逃げ出すほどの流麗な作品へ変貌する。まさに、魔法。以前書いた感想はコチラ。
4・菊池良生「傭兵の二千年史」
著者の菊地良生は、欧州史を抜群に面白く語るマスター。オシャベリがウマいというより、歴史を語る切り口が絶妙。以前書いた感想はコチラ。
5・山本昌「133キロ怪速球」
タイトルの「かい速球」が「アヤシい」の「怪」であることに注意。
阪神の巨人キラー左腕・納見は山本マサと同じ匂いがする。つまり得体の知れない可能性を感じさせるということ。
以前書いた感想はコチラ。
6・堀井憲一郎「落語論」
寄席で年間何千という高座を聴き続ける著者の暴走気味の落語論。菊地・大谷「アフロ・ディズニー」に似た醒めたアツさを感じさせる。
以前書いた感想はコチラ。
7・酒井順子「女子と鉄道」
「ですます調」コラムのクィーン・酒井順子。何処までネタで何処まで本気か分からない。
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8・池上彰「わかりやすく〈伝える〉技術」
分かりやすいニュース解説でおなじみ池上さんのハウツー本。土田晃之にシンパシーを感じているのが面白い。
以前書いた感想はコチラ。
9・古田敦也「「優柔決断」のすすめ」
古田式野球がうまくなる方法本。恩師野村は、古田を名指しで「人望がない」と言い切ったが、人望のないメガネ男は、理詰めで本を書くので素人に分かりやすい。
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10・五十嵐太郎編著「ヤンキー文化論序説」
ヤンキーという現象をデザイン意匠視点から捉えようというココロミ。インタビューが収録された都築響一の不機嫌が面白い。無視されるのも腹立つが、変な文脈で語られるのもむかっ腹がたつのか?
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次点・原武史「「民都」大阪対「帝都」東京」
阪急グループ創始者小林一三は、従来先見性豊かな優れた経営者と宣伝されるが、「「民都」〜」は、彼の商魂のリバタリアン的側面をクローズアップしているようで興味深かった。
以前書いた感想はこの辺り。