三中信宏系統樹思考の世界」雑感
(講談社現代新書 ISBN:ISBN:9784061498495)


「○○選手は野球をよく知っている」
野球解説などで、たまに耳にする言葉だ。この場合の「知っている」は、野球というゲームにおける駆け引きに長けているとか、ゲーム展開に則したとっさの機転に非凡さがあるという意味だろう。間違っても、野球ルールブックを丸暗記してるとか、V9時代の読売巨人軍の戦歴やこぼれ話に詳しい、という意味ではない。つまり野球勘に対する賞賛で、野球知識の分量を言及してるわけではない。
学者の業界でもこれと同じで、「よく知っていること」がブイブイ言わせてたりするみたいだ。
で、系統樹思考だ。モノの起源(樹の幹)を想定し、形状A、B、Cを枝葉に割りあて、その関連性を見渡す方法。
野球勘に喩えるなら、これまでの科学のプレイヤーとしての学者は、分類思考の虜だったと。虜だから、分類思考ゲームが上手いのは当然とおっしゃってるわけです。
けどまあ、分類思考が悪いということではないだろう。ただ手癖になっちゃイカン!と警鐘を鳴らしてる風。本書で哲学とか形而上学とかいう言葉が出てくるが、科学するための分野毎の小さなルールとかそういう意味。
体育会系伝統の先輩後輩な上下関係は、日本でスポーツするうえで、抜き差しならない慣習だ。筆者にいわせれば、分類思考は、科学する者のうえに長年にわたりおおい被さってきたという感じか、体育会系の悪しき伝統みたいに。
まあ、要するにこうした旧弊を打破に系統樹思考は便利だと著者は説いてるわけです。
この本読むきっかけは、オレの読書ライフにおける「原武史問題」が大きい。
原の「大正天皇」の論法というか仮説展開が、ちょっと。。。。とおもったのがコトの始まり。なんだろう。もう全然原武史よむ気起きないね。ま、原武史読まずとも死ぬわけでないからアレだが、なんかね。釈然としない。当てずっぽだが、原は、意識的にアレをやってるんだと思う。で、元ネタはギンズブルグだ、たぶん。最近原は、松本清張を持ち上げたりしてるが、アレもギンズブルグ的アプローチを清張に見いだしているせいだとぼくは睨んでいる。週刊現代奥泉光「神器−軍艦「橿原」殺人事件」を原が激賞しているのを見たとき、奥泉の「糸と痕跡」評(参照)を読み、奥泉に興味を持ったんだろうと思ったね。
ギンズブルグ読めばイイのかもしれないけど、それもシンドイしね。で、三中信宏系統樹思考の世界」 を手にとった。系統樹思考法、だいたい把握できたかな。慣らし運転的に原武史大正天皇」仮説の妥当性を検証してみようと思う。



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「神器−軍艦「橿原」殺人事件」は未読なので、こちらを紹介。ジャンル小説としての手管というか、松本清張節に火曜サスペンス素人探偵モノが接合された感じ。いってみれば、パロディ。
原は、奥泉の戦略的なモノマネ芸に共鳴してるんじゃないかな?